寄稿:「しまね田舎ツーリズム」を進めていく

寄稿:「しまね田舎ツーリズム」を進めていく

                    平成17年9月30日
                    島根県地域振興部長 藤原義光
戦後の我が国の経済発展は、田舎で生まれ育った若者が集団就職列車や進学などでふるさとを離れ、都市部の労働力となることによってもたらされました。その結果、近年は陰りが見えてきたとはいえ世界有数の経済大国となる一方で、国内には極端な過密地域と過疎地域が存在することにもなりました。
国際社会の中で、経済力のある日本であり続けることも当然重要ではありますが、今後も、社会のあらゆる分野で市場原理や効率一辺倒の追求が続くとすれば、競争による精神的ストレスの増大、ニート・フリーターや青少年犯罪の増加、食糧自給率の低下などが進み、日本社会が本来的に持っている様々な良さを見失った、不健全でバランスを欠く社会になっていくのではないか、と危惧されるところです。
先日の報道によりますと、今年度上半期の我が国の総人口が減少に転じ、いよいよ長期にわたる人口の減少と少子高齢化の時代に突入しました。また、2年後からは全国で「団塊の世代」の大量退職を迎えます。
このような時代の転換期にあって、都市と田舎が対立するのではなく、両地域が補完・共存する新たな価値観を創出し、全国民が理解・共有していくことが何よりも大切だと考えています。
田舎とは、自然の中に生きている「生命」、その恵みを頂くことを生業とした「生産」、そしてそこでの営みとしての「生活」、この全てが混然一体と融合した地域です。
いわば田舎は、都市が失ってしまった日本文化の源泉が脈々と息づいている大変意義深い地域であり、都市住民も、定住や交流によってこの地域に身を置くことが、現代社会が抱えている病理現象の問題解決の糸口になると考えています。
このような田舎の意義や価値を、そこに住む人たちが自らの暮らしの豊かさと実感しつつ、その「お裾分け」に対して訪れた人が気持ちよくお金を払う、このような理念に基づく交流を推進したいと考えています。
この理念を、我々は「しまね田舎ツーリズム」と呼ぶことにしました。
既存の宿泊施設に加え、現時点で16団体、115軒の農林漁家が、本県独自の規制緩和を活用して農山漁村民泊に取り組むとともに、「しまね田舎ツーリズム応援団」のほうも100名近くになっています。
また、知事から県外在住者20,000人へのUターン呼びかけに併せて実施したアンケート(回答者2,000人)からも、都市住民の「田舎暮らし」や「ふるさと回帰」への強い志向が明らかであり、50歳代以下では「迷っている人」も含めると、約4割の方々がUターンを選択肢に持っておられます。
こうした都市側のニーズも踏まえた都市住民と田舎との交流や定住の促進、また、マネーフローの拡大が望めない時代に、地域自らのストックを活かして自立を目指す取り組みの推進など、住民や市町村、定住財団など関係者の総力を結集して、田舎のためであり都市のためでもある田舎の振興に取り組んでいく考えです。
併せて、国に対しても、地方や田舎の存在意義を国家のグランド・デザインで明確に位置付け、各種政策を立案されるよう、機会をとらえては島根県の考えを主張・提案していきたいと考えています。
島根県は、以上述べた「しまね田舎ツーリズム」を、できるだけ多くの方々の御賛同を得て、その輪を広げながら進めていきたいと考えています。皆様方の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。

このサイトはオープンソースソフトウェアのRubyで構築されています。