人材論の復習(談論版)

 人材について、「人財、人材、人在、人罪、人災」という5類型の言い方がある。別のものでは、「見ざる、言わざる、聞かざる、せざる、動かざる」の「5ざる(猿)人間」ではなく、「見るぞう、言うぞう、聞くぞう、やるぞう、動くぞう」の「5ぞう(象)型人間」であれという言い方もあった。「地方分権」や「地域活性化」が、熱く、盛んに論じられた頃によく使った表現である。昭和の終りから平成の始めにかけての頃だから、今から20年は前のことになる。使い古されてきて、「何をいまさら」といった観があるが、平成に育った若い世代には語り継がれていないむきがあるので”蔵出し”をして披露したところだ。
 二つとも、有為な人材としての具体的な行動を勧め、コミュニケーションや現場主義の大切さを根底に据える考え方だ。一般論でいえば、われわれ山陰人は積極的な社交は得意ではない。自己アピールや、弁舌と論理でもって世渡りをするのは苦手だ。「あうんの呼吸」を重んじ、相手が嫌がりそうだと思えばはっきりとは言いきらない言い回しを文化とする。出雲人がその典型である。
 その”美風”が、穏やかで人情味豊かな地域性を今に伝え残して来たことは評価に値するが、他方、それが足かせとなり新進の気概に欠ける点は否めない。
 加えて、最近、コミュニケーションに難があったり、積極性や気迫、気概に欠ける若者の例をよく聞く。(むろん、そうではない頼もしい新進気鋭の若者も多数存在する。私の近辺の若者は概して皆そうだ。)
 生まれた時から既に豊かな時代で、ニュー・ファミリーのパパとママに大事に育てられた世代が早くも40歳に届く。最近、男の資質で最も評価の高いのは「やさしさ」で、「アツイ、コユイ、バンカラ」やハングリー精神とか青年特有の生意気さなどは不評のようだ。かくして”草食系男子”なる絶妙?な表現が生まれた。日本の若者が海外留学や、海外に出かける職場を嫌がったりする傾向にあるという。「日本ほどいい国はない」ことからしたらこれは頷ける。しかし、わが国は、今や国家存亡の危機という表現がオーバーではないほど、国際的経済的文化的な難問を抱えている。道を誤れば、「日本ほどいい国はない」が過去のことになりかねない。その進路は、進取の気概に富み、積極的に“うって出る”資質を持った若者に託すしかない。
 地方定住にあっても同様だ。地域を担う人材が、「5ぞう型の人財」であって欲しい。「人材」は歓迎のうちに入るが、「人在」は見きわめをしてから。「人災」や「人罪」はノー・サンキューだ。これからを担う若者には、したたかに、しなやかに、肝太く、大胆にチャレンジして県勢振興を進めて欲しい。
 昨年8月20日付の「談論風発」で、宮脇和秀さん(島根経済同友会代表幹事)が提唱された「何もしないという無駄をしない」という言葉をしっかり共有して、前傾姿勢で一歩一歩前進したい。そうした思いでのタイトルの「人材論の復習」である。


このサイトはオープンソースソフトウェアのRubyで構築されています。