虚偽表示(羊頭狗肉)

有名ホテルやレストランのメニューの虚偽表示(誤表示)の報道が、次から次へと頻発した。この手合いのことは、今までに、豚肉を牛肉と偽わるなどの材料偽装、高名な産地を名乗る産地偽装、客の残した素材の使い回し、店先から引き上げた土産物の賞味期限打ち直しなどいろいろと繰り返されてきた。
「ああまたか」と思うものの、テレビのニュース番組などが重大事案のごとくに報道するのを見ても、比較的穏やかに、冷静に受け止めている。
自分には縁のない大都市の“高級”な店だから?日頃から有名ブランド品や行列のできる店などには関心がないから?芝エビをバナメイエビとかと生物学のような表示のほうが食欲をそそるわけではないし、そのどちらが高いか、うまいか消費者は知らない。食を語るには食文化としての呼称があるのと違うか?
こうしたこともあるが、最大の理由は、あまりにも世の中が効率主義、金銭主義(もうけ第一主義)に陥ったことから、このてのことは当然予測できる“想定内”だからだ。日頃のニュースでは義憤にかられ憤慨することが多い私だが、これにはどこかで「そうだろうな」と覚めた見方をする。 
   「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたという。けっこうなことだが、日本食の代表たる味噌、醤油、豆腐の原料である大豆も、うどんをこねる小麦粉も、てんぷらの衣もエビも油も、刺身のタコも、朝食の鮭の切り身も輸入が大半だ。肉や卵が国産でも飼料は輸入。食料自給率が一番高いメニューは、材料の米、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎがほとんど国産の洋食カレーライスだという笑えない現実がある。
こうした営利至上主義や食料事情に目を向け、問題提起すべきと思うが、それをしないで、日銭を稼ぐため身を粉にして働く立場の弱い調理現場をトカゲのしっぽ切りで“コソ泥に縄を打つ”ように取り上げ非難する。
「羊頭狗肉」は政治にも頻出する。先の政権は、出るはずのない財源を、「事業の見直しをすれば20兆円やそこらはいくらでも捻出できる」として、高校授業料の無償化、子ども手当などを公約し、それが国民に受け政権に就いた。そしてたちどころに行き詰まり、国民は失望し、政治不信がますます助長された。
現政権はその反動で、昨年の衆議院選、今年の参議院選で大勝して“日本をとりもどし”(自民党のスローガンだった)、圧倒的多数の数を恃んで“決める政治”を進めるが、いま最も進めるべき一つは、生産者や生産地(地方)の役割を正当に評価し、食育基本法がかかげる「我が国の優れた食文化の尊重」の理念を推進することだ。(法には「身土不二」や「医食同源」と同じ考えも盛り込まれている)
地方切り捨てや道州制などが“決める政治”を掲げて進められぬよう、ゆめゆめ監視を怠ってはならぬ。こうしたことが、虚偽表示よりももっと深刻で根本的な問題だと思う。


このサイトはオープンソースソフトウェアのRubyで構築されています。