平成26年度 ふるさと島根定住財団運営方針(理事長所信)

 平成26年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申しあげます。
 まず、平成25年度の業務執行及び主要事業の取り組みを総括いたしますと、おおむね満足のいく結果であったと考えています。
特に、ジョブカフェ事業やUIターン、職業紹介、NPО支援などの業務全般に亘って、職員が新しい企画や斬新な催しなどを展開し、テレビや新聞などのマスコミにもその都度取り上げられました。
年度当初、職員に対して、「情況は厳しく、閉塞感があるが、定住財団という元気のいい財団があるな!と言われるよう、積極果敢に前傾姿勢で取り組んでいこう」と申しました。職員のみなさんはそれを見事に実践してくれました。
「業務の積極的な取り組み〜マスコミ報道〜財団・財団事業の知名度アップ〜事業への参加者の増加〜事業成果、財団使命達成度向上」の好循環(スパイラル)が叶いつつあります。
 しかしながら、今春は、県人口がいよいよ70万人を割りこむという数字の上での大きな転機となりました。
 第1回国勢調査が実施された大正9年(1920年)の県人口を見ると、 714、712人(全国56百万人)でこれを既に下回り、日本の近代化以降のここ100年では最も少ない人口の時代となります。
人口定住を使命とする定住財団は、これまでも、こうした情況を深刻に、冷静に受け止め、昔使った言葉でいえば、「人口定住のためなら悪魔とも握手」の心構えでの取り組みをしてきました。同じ70万人でも当時と今の地域分布は異なり、松江、出雲部の増加とその他の地域の減少が相殺された70万人です。
この大正時代から人口が増加しなかった県は残念ながら島根だけ。
 島根はなぜこうも特異な県なのか。「松江などの都市が人口流出を止めるダムとしての機能が弱かった」。「当時の人口が中山間地域に相当シフトしていた。それだけの人口を養うだけ裕(ゆたか)だった」。「それを支えたのが製鉄、製炭と農業。その後、製鉄やエネルギーの構造改革で廃れた」。
これらの分析は多分正しいと思いますが、「なぜ島根だけ」の答えにはなっていません。
そもそも、分析はあまり意味がないかもしれません。これからをどうするかの強い意志を持って、定住財団は自らの使命に全力で向かっていくことだと考えます。精神論になりますが、情況の変化に気づかず何の行動も起こさずに死を迎える「ゆでカエル」にはならないこと、“ぼやき”では何も生まれないことを肝に銘じ、前傾姿勢、現場主義で事に当たっていく所存です。
   こうした思いで運営に当たりたいと思いますが、具体的事項について、いくつかの主要な点を申しあげます。

 まず、,録Πの配置などについてです。4月には国の移住・交流推進機構(通称JОIN)に職員を派遣いたします。この職員はJОINの業務を通じて財団の使命を果たすほか、26年度には強化する東京での「UIターン人材誘致事業(県直営の事業)」などにも関わる東京駐在員的な役割を担ってくれると確信しています。また、県しまね暮らし推進課への出向職員については引き続き派遣を継続いたします。
こうしたこともあり、4月には2名の財団プロパー職員を採用いたします(プロパーは計10人となる)。新しい職員が先輩職員に負けない躍動感あふれる、「クール・ヘッド&ウォーム・ハート」な人材となってくれることを願っています。またそうした職員として養成してまいります。

△錬妝疋拭璽鷽雄爐亮け入れの基盤となる職業紹介業務についてであります。
25年度も業務を強化する目標を掲げましたが、結果は約120人の紹介(雇用)数となりました。これは、平均すればほぼ毎週2名の実績となります。
また、ジョブカフェ利用者について新しく開始した「短期就労体験事業」では、14人の体験、6人の就業となりました。
26年度は職業紹介業務に関わる職員を、より有機的・機動的な業務体制とすることに加えて、専任職員を1名増員し、一人でも多くの就業につなげていきたいと思います。

はUIターン受け入れのうち、財団の事業費として最も大きい看板事業の産業体験事業です。時代情況にあわせ毎年度進化させ、業種は当初の農林水産、工芸に介護を加え、昨年度からは自宅Uターンも対象として実施しています。最近の傾向として、有機農業に関心を持つ体験者が増えています。また、農業や農村は厳しくはあっても“かっこいい”と自らのライフスタイルを語る若者がいます。「里山資本主義」の共感も広がっています。今はまだ弱くても、こうした微風を大きな風とする“ふいご”の役が財団に課せられています。
「地方は“生命・生産・生活の3つの生”の良好な関係が成り立っている地域であること」を定住・交流情報の全国誌やインターネットなどでも積極的にアピールし、定住や交流促進(田舎ツーリズム)につなげていきます。

い話楼茲鼎り支援についてです。
25年度から、「参加することで地域を支援しよう」をスローガンとして提唱していますが、この考えの一環でもある、「シニア世代の持つ経験やスキルを活かしたボランティア(技ありボランティア)」を新たに推奨してまいります。
 新規の活動や団体の立ち上がり期を支援する地域づくり応援助成金については、応募がやや低調になってきました。県予算ではこの種の支援が縮小している中にあって、この助成制度は数少ない制度であります。この助成に手が挙がる取り組みを促す意味でも、地域活力を醸成し、元気を出すヒントや契機とするため、県内外の実施例やそのリーダー達の熱い思いを聴く講演会、NPOの会計処理や基礎知識などの研修会を引き続き実施します。
また、NPOの事務処理や情報発信に長けた先発例を、後発の団体にボランティアでコーチするアドバイザーの派遣などを行ない、継続した活動への参加を促します。

イ六堋村などとの密接な関係の構築です。
定住財団の事業は、いずれも市町村や各地域、企業との密接な提携(連携)があってこそ、事業の円滑な実施が図れるものであります。
県市長会では県人口の70万人割れを深刻に受け止め、このたび総合的な定住対策を一層強化していく旨の方針が出されたと聞き及んでいます。
顧みれば、島根県の人口定住対策はスタートを過疎対策におき、中山間地域などの定住条件不利地域を重点としてきました。今後、数字的に実を上げるためには市部での定住が欠かせません。 地方都市は“利便性”と“自然が身近にある”という双方の利点があることをアピールして、若者からシルバー世代までの定住施策を進めてまいりたいと思います。そのためにも、市部にも多く見られる空家を社会資源として利活用し、定住や起業などが進められるよう、関係機関などと検討し誘導を図っていきたいと思っています。
連携して業務を進めるには、地域や企業、市町村との人のネットワークが不可欠であります。クールで機械的な事務処理だけに留まることなく、心のかよう緊密な関係の維持・構築・促進を心がけ、職員一人ひとりが人脈を培うことはもとより、組織としてそれを共有する取り組みも進めます。例えば、各研修会の後の交流会やUIターンした方との意見交換会を実施したり、各地域でのイベントや祭事に積極的に参加することなどです。
人口問題がより深刻な石見部については、石見事務所と市町担当者や地域との意見交換会、「6時からセミナー」などを行なっていますが、私の持論である「県都との物理的な距離や時間的な距離はなかなか縮められないが、心理的な距離は縮められる」を常に心において業務に当たってまいります。

Δ歪蟒擦簔楼莖萠倭進のための調査・研究及び試行についてです。
繰り返しになりますが、県勢の閉塞感を払拭するためには、既成概念に捉われないアイデアや、地域情報をリンクさせた新しい着想などによる果敢なチャレンジが求められます。
民間団体などからの相談の中には、実施による成果が期待できるが、既定予算の枠組みでは支援ができないものや、財団が先行的に調査研究し市町村などに提案したい案件があります。こうした課題に対応するため調整費的な予算を新たに計上し、「何もしないという無駄をしない」ための取り組みを試行してまいります。

以上、平成26年度の重点事項について申しあげました。
もとより、定住財団は、この他にも、幅広く、多くの事業を実施しています。
学生の就職活動の開始期の変更が予定される中での就職フェアや学生登録、UIターンのための県外での相談会やアドバイス、基盤が整いつつあることから、より誘客に力を入れたいしまね田舎ツーリズムの推進などの様々な活動を着実に行っていくことが基本であります。
 職員誰もが、「人口定住の促進が財団の使命である」と心得、日々の業務は、それを進めるための取り組みの一つであり、各事業は自己完結的にではなく、相互に関連性を持たせて実行することで財団活動全体の成果があがることを意識し、不断の活動を行なってまいります。こうした考えでの事業の実施とその成果の繰り返しがいい循環(スパイラル)としてより確かなものとなると思います。

 最後になりますが、財団の事業はその大半が県民の皆様から負託を受けた県の予算で執行しております。公益法人としての自覚と使命を常に持ち、県民の負託に応えてまいりたいと考えております。
引き続き、各位にあっては、ふるさと島根定住財団に格別のご支援とご協力をいただきますようお願いいたします。

 備考

「悪魔とも握手」 拙稿(平成13年2月18日 山陰中央新報)
「ふいご」の役割 藤山浩(島根県中山間地域研究センター)
「何もいしないという無駄をしない」 宮脇和秀(松江市 ミック社長)


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