中海赤貝の復活  地域特産振興の先例に

 かつて中海の特産物であった赤貝だが、努力の甲斐かいあって養殖の見通しが立ったという。”高級グルメ”などとは縁のない暮らしでも、食にはかなりの関心を持つ者にとって大変喜ばしい情報だ。その貴重品を今年はおせちとして味わえた。味は濃厚、身はプリプリでまさに極上の味だ。
 子どものころ、おふくろが暮れに料理をすると正月を待たず幾つかをくすねて食べた。正月ぐらいしか山間地の貧村では赤貝さえ食べられなかった。その懐かしさもあって、他の魚介類よりやや下位の食材にランクされても、冬のこの時期の風物詩として食卓に欠かせない文化遺産級の「食文化」だ。
 中海ではピーク時には1600トンも獲れたという。汽水から揚げても生きたまま山間地まで運搬できるからカマスに入れて運び、よろず屋の店頭で売られた。少し前までは笠岡産が多く今は有明産が主力だが、そこへかつてのエース中海産の復活だ。この復活には県水産技術センター、中海漁協の他にNPО法人自然再生センターも寄与しているという。
 また、赤貝飯の駅弁も復活した。動きとしてはいまだ道半ばと思えるが、「地域資源や地域の伝統を活いかした地域活性化」のうれしいモデルだ。軌道に乗って本格的な養殖事業になり、それを使った料理も広く観光客にも提供できるようになれと熱烈にエールを送りたい。
 また、美保湾では銀サケの養殖が軌道に乗ってきたという。まだ、口にしていないがこれも楽しみだ。

 伝統的な食文化を挙げてみると、今後の進展を図る意味で栽培系に限定しても、津田カブ、黒田セリ、出西ショウガ、ゴボウ、ワサビ、メノハ、ドジョウなどが挙がる。また、新しいものでは、ブロッコリー、イチジク、ヒオウギ貝、イワカキ、さらに新しいものでは、サクランボ、キャビア、タラの芽、コゴミなどが取り組まれている。
 これら、伝統的な食材などの中から、赤貝の例に続く品目が大きく成長してほしいと願う。そのためには関係者や支援機関の連携と体制の整備が必要だが、それ以上に成功に向かっての熱意と揺るぎない信念、積極果敢に打って出る「前傾姿勢」が必要だ。そしてそれを地域の金融や行政が支えてやることだ。
 また、県民が「参加することで地域を支援する」ことだ。この場合の「参加」とは特産品を地域で育てる気持ちを持ち、積極的に購入者、消費者となることだ。嗜好や金銭が絡むから能天気に提唱するわけにはいかないが、可能な範囲で消費を楽しみ動きを支援することだ。1次、2次、3次産業を統合した「6次産業」の取り組みの必要が謳われるが、何も一つの事業体がその全てを担う必要はない。地域が連携して担う地域としての6次産業化だ。
当然ながら、ここでの3次産業には観光や田舎ツーリズムの取り組みなどを含む。

 島根県人口が70万人を割り込んだ状況にあって、地域産業を振興し、がむしゃらにでも就業・雇用の場を増やしていかなければならない。

 幸いに、若者の中に「農業・農村はかっこいい」と思う者が現れてきた。ふるさと島根定住財団が実施中の産業体験事業(1年間)や国の制度で市町村が受け皿の「地域おこし協力隊(3年間)」の実践者、UIターン相談会の来場者の人数にもその傾向は読み取れる。
しかし、いまだ微風であるこの地方定住の風を強く大きくし、国が進める地域創生で激しくなる全国競争に勝つことで、定住の地として選ばれなければならない。我々はその風を興す「風神」の役割を果たしたいと願う。そのためには、関係機関と今まで以上に連帯・連携をしつつ、努力したい。


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