UIターン希望者向け無料職業紹介事業の近況(でんどう)

 UIターン希望者向け無料職業紹介事業の近況  副理事長 原 仁史

 公益財団法人ふるさと島根定住財団は、島根の交流・移住・定住人口を増やすため、ー禺圓慮内就職促進、県外からのUIターンの促進、3萠呂般ノ呂△訝楼茲鼎りの促進の三つの取組みを柱として様々な事業を展開しています。すなわち、人口増減の要因である自然動態及び社会動態のうち、社会動態をプラス(「社会増」)にする成果を出していくことが当財団に与えられたミッションです。

 「平成27年島根の人口移動と推計人口」(H28.3 島根県政策企画局統計調査課公表)によれば、平成26年10月から平成27年9月までの1年間の島根県の社会動態は、県外からの転入者が13,256人、県外への転出者が14,257人で、1,001人の社会減(転出超過)となりました。依然として社会減が続く状況にあるものの、前年からは324人の減となり改善の兆しが見えています。

 さて、財団では、社会増に直接つながる上記△亮菫箸澆琉豐弔箸靴董∧神18年度から県外からのUIターン求職者と県内企業の求人のマッチングを図るための無料職業紹介事業を実施しています。UIターン希望者向けの「産業体験事業(長期体験)」と並ぶUIターン支援の柱となる事業です。事業開始以来、求職登録(UIターン希望者)、求人登録(県内企業)とも順調に数を伸ばし、求職登録者数は平成23年度に、求人数は平成25年度に、それぞれ1,000人を突破しました。このことは、就職決定者数の増加にもつながり、平成24年度以降毎年100人を超える実績が上がっています。

 近年は特に、介護・看護、運輸・建設などをはじめ多くの業種で人手不足が顕著となっており、求人数が急激に伸びてきています。これまでは、求職登録者数が求人数を上回る形で推移してきましたが、平成27年度(H28.3.31現在)は、求職登録者1,827人、求人数2,021人と、逆に求人数が求職者数を上回る状況となりました。就職決定者数も初めて200人を超え過去最高を記録しました。有効求人倍率が全体としてプラスに転じ、就職決定者数が飛躍的に増えたたことは大変喜ばしいことですが、業種ごとに跛行性があることも予想され、中身をよく分析する必要があります。

 なお、このことに関連し、財団ではこのたび、これまで別個に運用してきたUIターン希望者向け移住・定住ポータルサイト「くらしまねっと」と県内外の学生向け仕事マッチングポータルサイト「しまね就活情報サイトjobcafeしまね」のデータを連動させ、さらにこれにハローワークの求人情報も加えた県内最大規模の「新・求人情報サイト」を立ち上げました。新システムのウリは、専用画面で県内企業と求職者が直接やりとりできるなど、大手民間の就職ポータルサイトにも引けをとらないオンラインによるマッチング機能です。県内企業は、いつでも簡単に魅力的な求人情報を“無料で”発信でき、スカウト機能やリコメンド機能など様々なマッチング機能を“無料で”利用できるようになりました。平成28年5月25日現在、2,947企業、4,891求人が掲載されています。

 地方の企業の人材確保ニーズの高まりや地方への移住・定住の流れが勢いを増す中、この「島根県版転職・就職サイト」が広範かつ有効に活用されることにより、UIターン求職者・就活生と県内企業との仕事マッチングが一層円滑に進むことを期待しているところです。

 以下、平成27年度の無料職業紹介事業の総括と求職・求人・就職決定における職種別内訳の状況について、若干の分析も交えながら紹介します。関心のある方は参考にしてください。

1.総括
(1)平成28年3月末現在の求職登録者数は、1,827人(対前年同期:+214人)
  ・性別の内訳は、男性が4分の3(75.8%)
  ・年代別の内訳は、20〜40代が全体の約8割(82.0%)
  ・現住所別の内訳は、関東・関西で全体の約6割(関東:32.3%、関西24.5%)
  ・学歴別の内訳は、大学卒が全体の約5割(53.0%)、高校卒が約2割(19.6%)
  ・UIターン別の内訳は、Uターンが約5割(50.7%)、純粋Iターンが約3割
   (29.4%)、島根県と何らかの関係(配偶者が県出身、島根県内の大学
   出身等)のあるIターンが約2割(19.8%)
  ・平成27年度の新規登録者は、前年度と同数の734人で過去最高
(2)平成28年3月末現在の県内企業の求人数は、2,021人(対前年同期:+491人)
(3)有効求人倍率は、1.11倍と平成20年度(1.15倍)以来7年ぶりの高水準(H25末:0.82倍、平成26末:0.95倍)
(4)平成27年度の就職決定者数は255人(対前年:+74人)で過去最高(休日を除くと毎日1人が決定した計算。事業を開始した平成18年度からの累計は、1,182人)

 上記のように、無料職業紹介事業における求職登録者数、求人数、有効求人倍率、就職決定者数は、いずれも過去最高レベルとなっており、UIターン求職者のふるさと回帰志向の高まりと県内企業の旺盛な(切実な)UIターン人材の確保ニーズがこれらの数字から読みと取れる。

 なお、平成27年度の就職決定者255人のUIターン者別の内訳をみると、Uターン者が143人、Iターン者(島根関係Iターン者を含む)が112人となっており、Uターン者の割合が高いのがこの事業の特徴となっている。出身地の島根に帰って地元の企業等で働きたいという明確な意思を持っている方が求職登録をしていることが窺える。この点は、UIターン支援のもう一つの柱である産業体験事業にはIターン者が多いことと対照的である。そして、この255人の周囲には452人の家族がいることを特記(銘記)しておきたい。
 また、就職決定者255人のうち9割超が求職登録後3年以内の者であり、県内就職に向けて活発な活動が見られる求職登録後の数年がマッチングの成否を決定づける重要な期間と言える。その意味で、新規登録者の増加は願ってもないことであり、財団の仲立ちもその分熱を帯びる。

2.職種別内訳
・求職登録者数1,827人のうち、最も人数が多い職種は「一般事務の職業」で304人、次いで「情報処理・通信技術者」が164人、以下「商品販売の職業(小売店)」110人、「農業の職業」101人と続く。
・一方、求人者数2,021人のうち、最も人数が多い職種は「情報処理・通信技術者」で174人、次いで「建築・土木・測量技術者」が168人、以下「営業の職業」139人、「介護サービスの職業」132人、「保健師・助産師・看護師」126人と続く。
・平成27年度の就職決定者数255人のうち、最も人数が多かった職種は「一般事務の職業(コールセンターオペレータを含む)」で48人、次いで「情報処理・通信技術者」が34人、以下「営業の職業」20人、「介護サービスの職業(介護員、ホームヘルパー)」20人と続き、この4職種(122人)で全体の約5割(47.8%)を占めている。
・求人・求職ともニーズが高い「情報処理・通信技術者」(有効求人倍率:1.06倍)が最もマッチング率が高い職種となっている。
・就職決定者が48人と最も多い「一般事務の職業」は、求職登録304人に対し求人登録は74人(有効求人倍率:0.24倍)で、企業側のニーズはかなり満たしているものの、求職者側にとっては狭き門と言える状況となっている。
・逆に、求人登録132人に対し求職登録31人の「介護サービスの職業」(有効求人倍率:4.26倍)は、就職決定者が20人と多く、求職者側にとっては就職先の選択肢が多い状況となっている。
・このほか、ミスマッチの大きい職種としては、求人登録168人に対し求職登録46人の「建築・土木・測量技術者」(有効求人倍率:3.65倍)、求人登録126人に対し求職登録4人の「保健師・助産師・看護師」(有効求人倍率:31.5倍)、求人登録15人に対し求職登録101人の「農業の職業」(有効求人倍率:0.15倍)などが挙げられる。
・求職登録と求人登録が共に相当数ある職種であっても、就職決定までには至らない状況もみられる。例えば、「商品販売の職業」は、求人登録88人に対し求職登録は110人 (有効求人倍率:0.8倍)であるが、就職決定者は10人にとどまっている。また、求人登録53人、求職登録82人の「開発技術者」(有効求人倍率:0.65倍)も就職決定者は5人という状況である。
・極端なところでは、求人登録91人に対し求職登録29人(有効求人倍率:3.14倍)の「自動車運転の職業」は、“売り手市場”にもかかわらず、就職決定者は0人という状況である。求人・求職の人数だけでは推し量れない因子(賃金等の処遇、勤務形態等の雇用環境境等)が働いていることが窺える。
・島根県・財団がUIターンによる意欲ある人材の活躍を期待している第一次産業についてみると、農業は、前述したように、求職登録101人に対し求人登録は15人と少ないが、就職決定者は8人を数えており、雇用就農が可能な法人に対する求人開拓及び産業体験等の活用次第で今後の伸びしろがあると思われる。このことは、基本的に雇用中心の「林業の職業」において、求職登録24人、求人登録24人、就職決定者7人という実績が上がっていることからも推測される。漁業は、求職登録19人、求人登録12人、就職決定者0人と、マッチングまでに至らなかった。
・全体として、求人は「士業」とも言われる「専門的・技術的職業」や「販売」、「サービス」など第三次産業に属する職業が多く、求職は「事務的職業」や「専門的・技術的職業」のうちの「情報処理・通信技術」の職種、及び「農林漁業」のうち「農業」の職種が多い。産業振興の中核とも言える「生産工程の職業」(ものづくり)など第二次産業の分野の求人・求職が比較的少ないことが、中小企業を中心としたアベノミクスの地方波及、さらには雇用を一つの軸とした地方創生を進めるうえで気になる点ではある。


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