女性活躍社会〜「家庭での子育て」にもっと光を

 「合成の誤謬」という概念がある。
一つひとつは正しいが、それを合わせたり別な概念と重ねると(「合成」の意味はここにある)、矛盾を生じてしまう理論や考えをいう。
主として経済学で使用されるが、国、地方の行政施策にもそうしたケースがよく見られる。

 先ごろ、島根県庁では「女性活躍推進に関する県庁内プロジェクトチーム」の提案があった。この資料を見ると、「経営者の意識改革や女性活躍を推進することの経済的メリット」などが挙げられている。

 男女共同参画社会の理念に基づいて、女性が活躍できるステージを充実することや、その意識を社会で共有するための啓発が必要だという考えに異論はない。
この検討会が発足した時にあるところで「女性が子どもを産み家庭で子育てに専念することは、女性活躍の場ではないのかどうか明らかにしてほしい」と発言したが、この提言は実務的な内容でまとめる趣旨で、制度的な課題には踏み込んでいないようだ。

 島根県では、夫婦が理解し合い支え合いながら地域活動している夫婦を「ナイスパートナー」として選定している(平成17年からのスタートで今までに約70組を選定)。

 この選定開始時には「男女共同参画の理念は男女それぞれが個人として尊重される社会であって、夫婦でものを語ってはならない」という反対論があった。

 結果は、当時の澄田知事の「どうして?夫婦こそが社会の基本だろう」でスタートした。この制度は、地域を担うリーダーたちに、選定を励みにしてもらうとともに、「夫婦とはいいものだ」との社会的な認識を高めることが目的だ。
ここには男女共同参画とナイスパートナー選定制度の「合成の誤謬」は生じていないはずだ。

 わが国の少子高齢化は、30年前から既にそうだったが、ここへきてより顕著になった。
少子化は、未婚率の高さや出生数の少なさが要因となっている。少子化対策では「子どもを産み育てやすい社会環境の整備」が政策に掲げられ、保育所の定数増や育児休暇制度の拡充など、政策はそれなりの成果を挙げてきた。寿退職も少なくなった。

 しかし現実には、制度が整っていないことや子育てに専念するため、出産を機に一旦は職場を退職する場合がかなりあって、子育てに一応のめどがついた時点でまた社会に復帰する事例も多い。
現実は、充分な育児休暇がとれる職場はまだ恵まれた職場だ。

 家庭で子育て中の母親は、皆が敬遠するPTAの役員を引き受けるなど地域活動を担う「世間という学校」で、職場では得難い学習もする。こうした経験は医療・福祉・教育をはじめ大抵の仕事にも活かされる経験となるはずだ。

 家庭での子育てを正当に評価し、「子育てにめどがついて社会復帰するときには、それがむしろプラス評価されるような社会システムを構築すること」が子どもを産み育てやすい社会の形成となり、少子化対策と女性活躍を矛盾なく(合成の誤謬がないように)進める制度となるのではないか。
現状は「女性活躍イコール社会登用」で、「家庭での子育て」は女性活躍の場としての制度や政策として認知されていないように感じる。

 子どもを育てるのは男もできるが、産むのは女しかできない。
こうした意見や、本稿ではあえて使用した「男」「女」の表記は、公の場では潜められている現状だが、あえて問題提起し、女性活躍や少子化対策の「談論風発」を期待したい。


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