平成29年度 ふるさと島根定住財団運営方針

 平成29年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申し述べます。

(平成28年度事業の総括)
 はじめに、平成28年度の業務執行及び主要事業について総括します。
 平成28年度も、これまで同様、財団の社是である「前傾姿勢」及び「現場主義」の旗の下、財団のミッションである「若者定住、UIターンの促進、魅力ある地域づくり」に、職員が一丸となって取り組みました。その結果、それぞれの分野において、「おおむね評価に値する結果」を残すことができたと考えています。
 これも、全国の自治体が一斉に人口定住対策の取組みを強化する中で、職員一人一人が、定住施策の先進県というプライドと高い使命感を持って積極果敢に取り組んでくれたからこそと思っています。
 ちなみに、昨年5月に島根県が公表した平成27年度のUIターン者数は4252人でしたが、このうち30歳代までが全体の3分の2を占めており、子育て世代がたくさん島根に流入していることが窺えます。平成28年度上期のUIターン者数も前年同期を140人上回る状況となっており、この傾向は続いているものと見られます。財団はこうした人の流れに直接的にコミットしていることで、職員の士気も高まっています。
 以下、「UIターンの促進」を中心に、平成28年度の具体的な事業成果を挙げます。


(平成28年度主要事業の成果)
 都会地(東京、大阪、広島)において島根への移住・定住を呼びかける「しまねUIターンフェア」は、平成22年度の開始以降年々来場者数が増えています。
 平成28年度は、3会場合計で前年を318人上回る1598人に達し、6年連続で過去最高を更新しました。
 特に、東京のフェアは、プロフェッショナル人材戦略拠点(しまね産業振興財団)との連携により、従来の東京交通会館からより収容力のある東京国際フォーラムに会場を移し、初めて「企業ブース」も設置しました。この結果、「しまね留学」への関心の高まりなどとも相俟って、かつてない867人(前年比+220人)の来場がありました。
 こうした入口でのいい流れは、UIターンの受け皿となる無料職業紹介事業や産業体験事業にも好影響を及ぼしています。
無料職業紹介については、人材確保を喫緊の課題とする県内企業の熱心な求人により、過去最高を記録した昨年度を上回る勢いです。平成29年2月末現在の決定件数は、昨年同期より8人多い243人(石見部49人)となっています。
 産業体験については、昨年度後半から今年度前半にかけて、認定者が集中的に増えたことから、県の補正予算とともに財団予算の補正(50,940千円の追加)を認めていただき、事業の執行に支障が出ないようにすることができました。平成29年2月末現在の新規認定者数は、昨年同期と同数の76名(石見部34人)となっています。
 「若者の県内就職の促進」の関係では、今年度初めて東京、大阪で実施した就職フェア(面接会)は、就活スケジュールが変更され短期決戦型となったこと(会社説明会の開始は3月のままで面接の解禁が8月から6月へと2カ月前倒し)や売り手市場を背景とした学生の大手志向により、両会場とも参加学生数が参加企業数を下回るという残念な結果に終わりました。
 一方、低学年を対象としたインターンシップは、申込企業数、申込学生数とも増えており、担当職員のマッチング業務も繁忙を極めています。在学中の学生を対象とした「しまね学生登録」も、高校との連携や大学が主催する保護者説明会でのPR・働きかけ等により、登録者数が1万人に迫るところまできています。
 年の瀬(12/28)に実施した「年末ジャンボ企業博」は、無料送迎バスの効果もあって、学生の参加が500人を超える盛況ぶりでした。ぜひ県内企業に目を向けるきっかけになってほしいものです。
 また、「地域づくりの支援」の関係では、今年度から新たに始めた「地域づくり情熱人(じょうねつびと)支援事業」や「地域づくり応援助成事業」の新メニューである「立上げ支援」は、それぞれにニーズが高いことが確認されました。これらの取組みが地域住民によく理解され、人材の活躍や地域の活力向上につながることが期待されます。
 このほか、2年目を迎えた「『農業・農村はかっこいい!』和歌募集事業」や「島根の子どもたちの隠岐体験学習事業」は、それぞれ準備から実施まで長期かつ膨大な作業を必要とする中で、執行体制や広報等のあり方に課題は残しながらも、充実した内容のイベントに仕上げることができました。


(平成29年度事業執行の基本的考え方)
 平成29年度の財団運営に当たっては、県、市町村と共に築く強固なトライアングル体制の一員として、「フットワーク、ネットワーク、チームワーク」を最大限に発揮しながら、ダイナミックに事業を展開してまいります。
 特に、新年度においては、情報発信の強化と情報共有による横断的取組みに力を入れたいと考えています。
 全国的に定住対策が活発になる中で、「ふるさと島根定住財団」の知名度も高まりつつありますが、県内をはじめとして年代を超えた関心を引くという点ではまだまだ弱いと感じます。
 例えば、財団が最初に接触する高校生や大学生は、「ジョブカフェしまね」という若者就職支援の窓口があることは知っていても、それがイコール「ふるさと島根定住財団」であるという認識はあまり持っていないように見受けられます。そうであれば、一旦県外企業に就職した者がUIターンを含めた自らのライフプランを考えるとき、「ふるさと島根定住財団」が頭に浮かんでこないことになってしまいます。
 また、UIターン者も含め、県民には、「ふるさと島根定住財団」が地域の課題解決や魅力づくりの支援も行っている団体であることが十分に伝わっていないようにも思います。
 こうしたことから、財団のPRに当たっては、財団の業務を横通しにつなぐ一本の線、すなわち人生のステージをつなぐ総合的な支援機能をこれまで以上にアピールしていきたいと考えています。


(平成29年度予算の概要)
 さて、島根県の平成29年度一般会計当初予算案は、財政健全化に向けたマイナスシーリングの継続により、総額で1.6%の減、うち義務的経費・投資的経費を除く補助費等の経費は2.0%の減、という厳しいものとなりました。
 そうした中にあって、財団が補助又は委託を受けて実施する定住対策の予算については、関係3部(地域振興部、商工労働部、環境生活部)のいずれの予算も前年度当初比プラスという力の入ったものとなり、合計で37百万円余(+6.0%)の増額となりました。
 このことは、人口減少問題に立ち向かうために策定された「島根県総合戦略」(H27〜H31)の中間年を迎え、定住財団の果たす役割に対する強い期待の現れと受け止めています。厳しい財政事情の中で予算が重点的に配分された意義を十分に噛みしめ、無駄を省いた実効性のある事業展開に努めてまいります。
 財団の予算は、この県からの補助・委託によるもののほか、国(厚生労働省)からの受託及び財団独自の財源(基金)により構成されます。平成29年度の財団予算は、これらの財源の確保状況や既存事業の実績、執行体制等を勘案しながら編成した結果、当初予算対比で1.6%増の総額751百万円となりました。
 平成29年度は、県の第2次定住対策重点化期間(H27〜H29)の最終年度でもあり、特にめぼしい新規事業は打ち出しておりません。既存事業の見直し・充実や執行上の工夫により、定住促進の実を上げていきたいと考えています。
 以下、財団事業の三つの柱に沿って、主だった事業の概要を申し述べます。


(1、若者の県内就職促進)
 まず、「若者の県内就職支援」の関係ですが、2018年卒の学生を対象とした就活スケジュールは、2017年卒と同様の日程となりました。説明会から面接開始までの期間が3か月と短いため、就活を行う学生は、企業研究に十分な時間を振り向けることができず、加えてここ数年の売り手市場も手伝って、早い段階で就職先の企業を絞る傾向が見られます。
 そうしたこともあり、平成29年度は、県外での就活イベントについて、昨年参加学生が少なかった就職フェア(面接会)は行わず、その分企業ガイダンス(合同説明会)に注力し、県内での就職フェア等に誘導したいと考えています。
 一般に、就活日程に入ってからは、県内企業は自社の魅力を伝える機会が十分につくれず、就活生も周囲の動向に影響を受けやすくなるため、低学年のうちから県内企業の情報提供を行い、島根で働く意識を醸成することがますます重要となっています。
 そこで、新年度は、島根県が就職支援協定を締結した関西、山陽圏の13大学を中心に、大学構内において、低学年を対象とした「島根」や「島根の企業」に興味をもってもらうようなセミナーを開催し、その後の就職イベントへの参加を促す流れをつくりたいと考えています。
 同様の意味で、財団が行う「しまね学生インターンシップ」は、低学年次に島根で働く意義や島根の企業の魅力を知ってもらう、とても有効な機会です。企業・学生の双方がそのチャンスを活かしてほしいと思います。
 また、財団にとっても、マッチング業務を通じて築いた学生との関係性は大変貴重なものであり、今後は、この接点を上記セミナー等への呼びかけに活用するなど、就職支援の実効性をより高めてまいります。


(2.UIターンの促進)
 次に、「UIターンの促進」の関係では、財団のホームページや新聞・雑誌等による定住情報の発信を強化します。県内外に財団の露出を増やすことで、「島根」に対する潜在的な関心層を掘り起こし、さらなる事業成果につなげていきたいと考えています。この点に関しては、県に新設される「広報部」にも大いに期待するところです。
 財団のホームページは、平成17年度の開設以降改良されておらず、機能全般が老朽化してきています。新年度は、ホームページの全面リニューアルを行い、県内外の人たちに、島根の魅力や財団の活動が鮮やかに伝わるようにします。
 東京、大阪、広島のUIターンフェアは、来場者・出展者のニーズに応え双方の満足度を高めるため、会場スペースの拡大や対応スタッフの増員、新規ブースの開設(漁業、地域おこし協力隊等)など、量的・質的両面の拡充を図ります。
 産業体験については、県において申請者急増分が別枠で確保されたことにより、前年度当初比50.1%増の総額183百万円余の予算を組むことができました。100人の大台を超える新規認定にも十分対応できる予算であり、UIターンフェア等での情報発信や相談対応の充実により、予算に見合う体験者の増を図ってまいります。
 なお、若年者の雇用対策として、県内在住の若者が産業体験を行う場合の助成も行っていますが、これについても、UIターン者の産業体験と同様申請が大きく伸びており、前年度のほぼ倍増の予算を計上しています。


(3.地域づくりの支援)
 次に、「地域づくりの支援」の関係ですが、地域はUIターン人材の活躍の場でもあります。定住対策としてUIターン対策や若者就職支援を行っている団体は、全国各県にありますが、地域づくりの応援をこれらとセットで行っている団体は、当財団が唯一と思われます。 他県にはないこうした事業を行っていることも島根の強みになっていると考えています。県外から人材を呼び込む上でも、地域と人が輝いていることがとても重要なファクターだからです。
 新年度も、「地域づくり応援助成事業」や「地域づくり情熱人支援事業
」などに、前年度と同規模の予算を確保し、これらの事業を通じて、地域が元気になる取組みのお手伝いをしてまいります。また、採択された団体の取組みについては、地域住民のみならず県民に広く周知されるよう、マスコミに積極的に情報を提供するほか、財団ホームページ上で活動の状況やキーマンの見える化、検索機能の付加を行うなど、情報発信機能の強化を図ります。
 「しまね田舎ツーリズム推進事業」については、実践者の掘り起こしに努めるとともに、小・中・高の体験教育や大学のゼミ合宿、企業の体験研修など、団体・グループ層の誘致に向けたプログラム開発を通じて、体験者数の増加を目指します。
 環境生活部所管の新規事業「中山間地域・離島におけるNPO創出伴走支援事業」については、今後3年間、財団が全額補助を受けて、小さな拠点づくりをサポートする中間支援組織(NPO)の創出に取り組むこととしています。
 財団基金を活用したオリジナル事業である「『農業・農村はかっこいい!』和歌募集事業」や若者の集いを推進する「ルネッサンス青年団事業」については、事業の内容や実績を検証しながら、継続して実施してまいります。
 なお、これまでの2年間、財団が県の補助を受けて実施してきた「島根の子どもたちの隠岐体験学習事業」については、実施主体を県に切り替え民間委託により実施されることになりました。


 以上、長々と申し述べましたが、「ふるさと島根定住財団」は、次代を担う若者が島根に暮らして、地域に魅力を感じ、やりがいや満足感、幸福感を享受できるような社会環境づくりに貢献したいと考えています。地域が輝くことで、人材が定着、回帰・流入し、地域の活力が一層高まる、そのことがまた新たな人材を呼び寄せるといった好循環が県内各地で生まれることが願いです。
 繰り返しになりますが、その意味で、財団の三つの柱の事業が有機的に絡まり合い総合的に展開されることが極めて重要なポイントと考えます。中山間地域における「小さな拠点づくり」や「しまね留学」、「地域おこし協力隊」などとの連携についても、そうした視点を持って積極的に関わっていきたいと思います。
 先ごろ、総務省が都市部で暮らす約3000人を対象に行った調査では、約30%が過疎地の農山漁村への移住に関心を示し若い世代ほどこの割合が高かったことが報じられました。地方創生という言葉はやや色褪せた感がありますが、若者が地方に向かう流れは底堅いものとなっているようです。財団が真価を発揮する環境はまさに整っていると言えます。
 新年度も、財団に与えられたミッションである人口定住の促進に、職員一同、「前傾姿勢」と「現場主義」の合言葉の下、地に足をつけ、積極果敢に取り組んでまいる所存です。
 引き続き、ご理解とご支援、ご協力をお願い申し上げます。


          公益財団法人ふるさと島根定住財団理事長  原  仁 史


このサイトはオープンソースソフトウェアのRubyで構築されています。