この4年 そして未来に向かっての断章(平成22年3月)

 私としては、全力疾走をした思いがあります。一方では余裕、ゆとりにも心がけました。着任早々からできるだけ、自分の言葉で表現し、メッセージ力の高い挨拶や文章を心がけました。その最も典型例が「感性を磨けば人生が楽しくなる、知性を高めれば人生が豊かになる」であります。

 また、誰でも入り易い教育長室を心がけ、それに応じたインテリアの工夫もし、誰彼なく生けてくれる花を欠かさず、協議の場においては時間が許せばできるだけ仕事に関わる雑談をすることで共通意識、コミュニケーションを図りました。

 乞われるまま、下手な詩や文章を書きました。講演を数多く引き受けました。授業もやりました。講演、授業のテーマは、「知ることの楽しさ」や「自然の生命、それを育み加工する生産、その生命をいただき消費する生活の「三つの『生』」、「心の豊かさ」にかかるものが主でありました。

 教員研修では、初任者研修、教頭研修など従来出席のなかった場にも出かけ、直接語りかけることで私の考えを現場で活かして欲しいと願いました。新規採用の辞令交付では一人ひとりと握手しました。

 様々な案件の処理に当たっては、惰性や前例踏襲を良しとせず、常に前傾姿勢を意識しました。

 意識下意識に課題を寝かせておき、夜中の思いつき、ヒントもメモしておき、それを磨くことで新たな取り組みの出発としました。

 教育長就任時、ある人が「県職員生活の集大成ですね」とメッセージをくれました。そうだと思いましたし、それはまさに地域振興、そして財政、人事などこれまで取り組んできたことの全体を集約する中で教育に取り組むことでありました。

 前知事が行儀の良くないやんちゃな私に教育を託したのもそうしたことであったと思います。

 地域振興の視点は常に必要です。それが、島根県行政の最も根源であるからです。農林、商工のみならず、土木や環境、福祉にとっても、教育にとっても。財政、人事については、厳しい財政再建の中、当局から切り込まれる甘い要求をしないことは財政課長OBの矜恃です。県全体の優先順位の中で必要と判断したものは果敢に要求する、これも矜恃です。

 ノミニュケーションもずいぶんと重ねました。

 「今度の教育長は酒好きだ」との諺が先行して着任しました。早々の課長会では「その諺は本当だ。だけど安心して欲しい。夜を徹してでも島根をどうするか、島根の教育をどうするか語る気のないものは誘いもしない。その気のあるものは全力でかかって来い。私も全力で応える。」と申しました。事実そのとおりになりました。浜田、益田、隠岐を含めなかなかハードでした。そうは思いながらも好んで市町村の教育委員との懇談の場も設けました、この会の昼間の勉強会では教育関係者以外の幅広い講師を心がけました。

 率直に言って、当時教育庁の課題解決の認識、行政のスピード感、パワーは県庁と比較して相当見劣りがしていたと思います。課題とはあるべき姿の理念を描き、それと現実とのギャップをいいます。そしてそのギャップを埋めることが施策であり、その取り組みにはギリギリ切り込む気迫、気概が必要です。

 そうした問題意識をもとに、いわば毎日が勝負。それぞれの課題攻略のいわば囲碁・将棋の対局の如きもの、課題を打ち破る道程と意識しました。

 結果、今の教育委員会は県の中で最も動きのある、課題も明確に示し、取り組むセクションだと自認しています。教育現場への浸透がどうかという不明な部分はありますが、少なくとも、事務局は県庁からの遅れを取り戻し、ものによっては追い越したとほくそ笑んでいます。

 例のひとつとして議会答弁を見ていただきたいと思います。 感性、知性、3つの生、生活習慣の向上、ふるさと学習等の実体験、学力向上の取り組み、高校再編の考え方、公民館や社会教育、手当の見直しや公の施設管理、読書や学校図書館、産業教育・就職対策、それらを進める組織・人事・定数。前傾姿勢、現場主義、ふるまい向上。

 残念なこともありました。不祥事の多発であります。このうち公金処理については制度上の甘さがあったので、取扱要綱の改正と厳正な処理を要請するところとなりました。不祥事にかかる所感は、書翰文に記したとおりです。一部の者の行為とはいえ、全体の評価につながります。自戒を求めたいと思います。しかし、私はそれであっても管理統制を強めることは好むところではありません。いわば、北風政策ではなく、太陽政策をとりたいのです。意を酌んで欲しいと思います。職場をお互いが悩みを話し合える、打ち明けられるものにして欲しいと思います。「朝はどこからくるかしら」の歌詞にあるとおり「家庭」を「社会」におきかえると、「明るい社会から朝がくる」となります。明るい職場から明るい朝がくることを信じています。

 今の私の到達点は、島根などの地方・中山間地域のアイデンティティを「3つの生」に求めています。

 自然の生命とそれを育み加工する生産、そしてそれを享受する生活です。この良好な相互関係、そして循環こそが人間の本来の生活であり、地方はそれが残されている地域です。そして現在の我々が抱えてしまった様々な社会病理を解決するあり様を示す地域です。我々は一日たりとも他の生命をいただくことなしには生きていけない事を認識することです。3つの生のかかわりを重視する価値観を理念とすることです。

 そしてそれは、「いただきます」、「おかげさま」、「もったいない」、「ありがとう」などを通してもうひとつの到達点である「ふるまい向上プロジェクト」とつながるものです。

 礼儀、作法やルール、モラル、規律にとどまらず、生活動作や生活習慣までを含む広い概念のふるまい向上は、さらに他者に対する思いやり、いたわり、世間には卑怯を恥じる心・生活文化の美学までを含むものです。そして、そこには当然温かい心、優しい心と凛とした厳しさが求められます。

 「おしゃれで凛とした生涯現役社会しまね」。

 平成15年策定の高齢社会ビジョンのスローガンです。当時自らが老人の仲間入りしたときのイメージとして、かくありたいと描いた年齢になりました。

 杖歩行するおしゃれな老人を心がけることとしましょう。

 面白き こともなき世を 面白く 棲みなすものは 心なりけり(高杉晋作)


「生命」
私は生命に感動する
生命の神秘に感動する
美しい花に感動する
花の匂いに感動する
花にとまる昆虫の動きに感動する
草木の芽ぶき、葉っぱの緑に感動する
果物や野菜のおいしさに感動する
秋の紅葉の色や冬景色に感動する


空にまたたく星や宇宙の広大さに思いをはせる


感動、感動と感動を並べても感動は伝わらない
コトバの力を借りなければ伝わらない
だから
感性を磨けば人生が楽しくなる
知性を高めれば人生が豊かになる


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