感性を磨き、知性を高め(平成21年11月)

 10月30日に開催された第50回島根県教育研究記念大会の大会誌への寄稿は、スペースの都合上、この稿の短編したものが掲載されております。


 「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」(古今集169番、藤原敏行)

 最も好きな歌の一つでこの時期の季節感を平易に情緒豊かに歌っていると思います。当時の歌会では朗詠が行われていたそうですから、「秋来ぬと」で間が入り、聞く人が「うふんん…?」と思ったところへすかさず、「目にはさやかに見えねども」。諸人「ううん!」。そして「風の音にぞおどろかれぬる」と続く訳です。そして、「ううん!!そうだ。」と共感を呼び、諸人はそれぞれの秋に思いを馳せることになります。それぞれの体験を蘇らせながら…。秋の気配。それは、風であり、光であり、秋の草木、雲の気配であったりします。風や光、草木や雲が心なしか秋らしくなった、日ざしが柔らいだ、という季節感の絶妙な表現だと思います。

 この大会の開催される今日は秋もだいぶ深まっており、この稿の季節感を実感するのは一年先になりました。

 さて、本日は、島根県教育研究大会の第50回の記念すべき大会です。この間、島根教育に情熱を注いでこられた諸先輩、大会の開催に尽力された皆様に深甚の敬意と感謝を申し上げます。そして、この記念大会を契機に、より一層島根教育の振興が図られることを切望しております。 常々申しておりますように、今日の教育的諸課題は複合的重層的に生起していると把えるべきであり、そうであるが故に、それに対応するためには、総合的な視点と個々具体の的を射た視点の両面からの対策が必要であります。そしてその対応にはスピードとパワーが必要です。スピードとパワーを発揮するためには、感性を磨き、知性を高め、全人格的に個人としての資質、能力や、情報の受信力を高め、前傾姿勢で事に当たることが必要です。そして、そうした個々人で構成される集団である組織が「1+2+3…+10=55」になる以上の力に高まることです。

 子ども達は毎年一年ずつ年齢を重ねて、やがて成人になっていくことを思えば、それぞれ子どもにとっての教育は、出生〜乳幼児〜幼・保〜小・中・高と連続しており、当たり前の事として、その発達過程に応じた養育、教育が、一貫した養育・教育の視点から、家庭、学校、地域が連携する中で展開されなければなりません。縦軸、横軸両面からの連携が必要な由縁であり、自明な事です。そして、こうした子どもは、大人になる準備をするために生きているのではなく、「子ども時代の人生」を生きているわけです。そう考える時には、「子どもの人生」として楽しく充実感がなければならず、単なる禁欲だけではならないことになります。こうしたことは、意外と教育を語るときに欠けがちな視点ではないでしょうか。

 こうしたことの他、この3年間できるだけ平易な言葉でスローガン風に様々なことを語り、提唱してきました。アフォリズム形式で記すれば次のとおりです。

  嵬世襪伸び伸びとした活力ある学校づくり」

 ◆嵜瓦遼かさをはぐくむ教育を知育、徳育、体育の基礎に据えた教育を」

 「感性を磨けば人生が楽しくなる。知性を高めれば人生が豊かになる。」

 ぁ峪裕┐琉椶蹐い篌然、生命などに感動する感性を磨き、知性を高め、全人格的に子どもと向き合う学校教育を」

 ァ峇霑叩基本、原点を今一度見つめた教育を」

 Α嶌F的教育課題は複合的、重層的に起きていると捉えるべきで、その視点からは、一つ一つの課題に対する的を射た対策とともに、課題が複合的、重層的であるが故に総合的な根底的な対策が必要である。」

 А峅魴茲垢襪燭瓩砲篭力な取組が必要、そのためにはスピードとパワーが求められる。」

 ─屮▲鵐謄覆鮃發張り、校内だけでなく、社会や地域の動向に敏感であってほしい。そして、アンテナを高く張りつつも流行に過度に動ずることなく、これまで培ってきた教育について不易の信念に自信を持っていただきたい。

 私ども教育に携わるものは、「教育のプロ」であります。プロは努力を評価される事が皆無ではないにしろ、結果を要求されるのは、スポーツや芸術を見れば最もわかりやすい例でしょう。教育のプロとして最も要求される資質は自らの感性と知性を磨き、全人格的に子どもたちに向き合おうとする熱意、向上心だと思うのです。これは努力と相同関係にありますが、対人関係における意思の違いだと思います。20代の教師は50代の教師に教育技術でかなわないからといって、子どもたちに対するメッセージ力が劣るとは限らないと思うのです。それは子どもたちがその教師の熱意に共鳴する事こそが肝心だからです。

 親子も、夫婦も、教師と生徒も、学校での職員同士も、すべて人間が構成する人間社会です。そしてその人間は好悪を抱く感情を持った存在であります。相互に冷えた関係では面白くも何ともないかわりに、組織の構成員が共鳴・共振すれば思わぬ好結果にもつながる事が多々ありましょう。

 新しいフレーズでこの稿を了えます。

 知的な会話の中で 子どもたちを育てよう 教師を育てよう


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