でんどう

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地方分権の今日~広域的、専門的業務は再検討も

 「住民に身近なことはできるだけ身近な市町村で」と進められて来た地方分権の推進。このところそれが最良かと疑問を感じることがある。


 まずは、三江線の廃止に伴う県の役割、そしてコウノトリの誤殺による母鳥の死と善後策だ。石見空港の利用促進も挙げられる。いずれにも共通するのは島根県庁の関わりの薄さだ。

 平成の市町村大合併で県内の市町村数は8市11町村の計19市町村となった。(ちなみに鳥取県も39市町村が19市町である。)

 これは地方分権と権限移譲は、受け皿としての市町村を強化する必要があるとして市町村合併も連動して行われた結果だ。そして、生活保護業務、老人や障害者福祉、建築確認審査、有害鳥獣駆除などが県から市町村に移譲された。

 一方、この合併と軌を一にして「地財ショック」といわれる大幅な地方財源カットを受けた。市町村は、仕事は増えたが財源は増えない台所の苦しさを強いられるから、なかなか専門職員を配置するだけの余裕がない。悪口になるが、場当たり的な綱渡り行政から(なかなか)進化できない。

 他方、地方分権では、県と市町村の上下関係は薄められ、おまけに県も地財ショックをまともに受けて金がないし、職員定数も大幅に削減されたから、法的に規定されている業務は機械的にこなし、それ以外は出来ることなら関わりを持ちたくないとする傾向にある。縮(ちぢみ)思考にとって、「第一義的には市町村の業務」はまことに都合がいい。

 三江線の問題では「地元の意向を尊重して県はそれを支援する立場」とのスタンスから一歩前に踏み出せない。先日、本欄で島根大学の関准教授が提案された「三江線の資産を一括して県が無償譲渡を受ける。その後は、じっくりと関係市町と対応を考える」というすぐに飛びつきたくなる案にも反応が鈍い。

 コウノトリの事故死は、野生動物の保護と規制を、県から市町村に権限移譲したことによる専門性の不足がある気がする。また、教育委員会は、文化財保護法上の天然記念物についての所管であっても、学校教育にかかる事務が大半を占める部局が動物の保護に当たる業務を所管するのは、いくら情熱的な担当職員が孤軍奮闘しても限界がある。

 4羽のひな鳥を雲南市に放鳥するのであれば、その生育環境やエサ場の整備などに性根(しょうね)を据えて取り組まねばならない。鳥は羽根があって市町村境界も県境もなくどこへでも飛んでいく。それを考えると市町村に移譲した権限だからという原則論では済まない。コウノトリの定住は、島根が定住対策の“うり”にする「人と自然との共生のシンボル」だからだ。

 石見空港の利用促進は、県や石見部の市町に加えて山口の県、市町との連携が不可欠だ。両県ではどう問題意識をもって取り組んでいるのだろう?

 県の影(関わり)が薄らいだのは、鳥取県や全国に共通する事象かどうかは分からない。保健所業務が県から「中核市」とされた松江市、鳥取市に移行されるが、県松江保健所に松江市保健所が併置されるという。また、中海・宍道湖市長会のような県境を越えた市どうしの観光などでの連携には異論はないが、これらは広域行政を担う県の役割とどう連携・分担するかの調整が必要だ。

 「住民に身近なサービスを身近な窓口で受けること」「住民自身が自己決定できる住民自治」は行政の方向として正しい。しかし、来年4月から国民健康保険財政は県単位となるが、この例のように、専門性の高い業務や広域に執行すべきものなどは、どこが担うのが最適か再検討すべきものもある気がする。

注:(   )の2か所は字数の都合で本文は割愛した。

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