でんどう

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孫留学ノススメ

 島根県では「孫留学」を提案している。解説するまでもないが、県外に住む娘、息子の子ども(すなわち孫)を学校在学中の一定期間同居させるか、寮などに住ませて預かることだ。

 このメリットは、地方で暮らすことによって、そこにある自然や社会での実体験をしながら学んで育ち、また家庭での習俗を習得するところにある。

 「島根で育つ教育」では、島前高校の島留学を先陣として中山間地域の学校まで広がった8校での例があり、「孫留学」は江津高校や隠岐高校で積極的な呼びかけを行なっている。

 先日、その具体的な事例を旧友から聞いた。彼は小・中学校の同級生で、別の同級生が親の法事で帰省したのに併せて5人ほどでの会食を催したが、そこでの情報である。

 大阪に住む娘の子が高校の3年間を松江の高校で過ごし、今は大阪の専門学校に進学したという。親は安心して預け、高校生も学校に溶け込んで卒業したという。

 今の我が国の住居の標準的な面積では、子どもが高校生にもなれば余裕のある居住面積はなかなかない。一方では、祖父母の2人の生活では余裕がある場合も想定される。そこに孫が暮らす余地があるということだ。


 祖父母との同居で学べることに、生活文化の承継がある。「米を研ぐ」や「お茶を沸かす」、「急須で淹れる」、「三杯酢、生醤油、隠し味」などは家庭での生活の中で自然と覚えるものだが、お茶の淹れ方は知らないし急須はその言葉の意味さえわからない世代が育っているという。
もう30年近く前、ある校長が新任教員に「わからないことがあったら何でも聞きなさい」と言ったら、来客にお茶を出す場面で「お茶の葉の分量はどれくらいで、お湯とはどちらから先に入れたらいいでしょう?」と聞かれたというがこれなどはまだかわいい方だ。最近では「米を洗剤で洗う」や「家でお茶を沸かしたことがない」などのレポートが出されている。
とかく「今の若い者は…」というがそれは違う。いつも言うことだが、教えていない大人の側が悪いのだ。遺伝に「隔世遺伝」というのがある。遺伝形質が世代を跳んで後の代に遺伝することをいう。孫留学は生活文化の隔世遺伝に当たる格好の方策と云えるのではないか。


 スマーフォンを離せなくなった女子学生を得意げに演じるケータイのCМ「私たちはスマートフォンと一緒に育った最初の人類!」が放映されている。その「最初の人類」こそが問題なのだ。
自然や社会の中での実体験やストレス・葛藤も、距離と時間のままならないもどかしさも無しにバーチャル(仮想現実)な世界で成長した人類が、はたして現実の社会問題を解決する能力を身に付けることができるだろうか。イジメ、他人を慮る心の低下、ふるまいの劣化などはすべて同じ根っこから生じている気がする。すなわち「想像(創造)力の欠如」でありその要因の「実体験の不足」だ。

 同窓生との飲食が昔の子ども時代を思い出させた。
それは「ミンナガ貧シカッタガ不幸デハナカッタ時代」だった。(諒)

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