でんどう

地域振興に関わる様々な方の意見、主張を掲載していきます。

UIターンの推進で島根を元気に
(松江法人会会報「かけはしVol.108」寄稿文)

UIターンの推進で島根を元気に

 はじめに

                     ふるさと島根定住財団理事長 原 仁史

 皆さんは、ふるさと島根定住財団をご存じでしょうか。最近は、定住財団が支援する取組み等が新聞等で報道される機会も多くなっており、知名度はそれなりにアップしてきているのではないかと思います。定住財団は、人口問題が県政の最重要課題とされた平成4年(「定住元年」)に産声をあげました。誕生からすでに四半世紀が経ったことになります。島根への定住拡大を目指して、「若者の県内就職促進」、「県外からのUIターンの促進」、「活力と魅力ある地域づくりの促進」という三つの柱で様々な事業を展開しています。
 本稿では、昨年来の「地方創生」で注目され、また、県内企業とも関係の深い「UIターンの促進」を中心に、最近の動向等について紹介したいと思います。


 人口問題と定住財団のミッション

 「このままでは全国の自治体の約5割に当たる896の自治体が消滅しかねない!」
 昨年、このような衝撃的な警鐘が日本列島を揺るがしました。いわゆる「増田レポート」です。これを契機に、国を挙げた「地方創生」の掛け声の下、全国の自治体が一斉に定住対策に走り出しました。
 島根県は、昨年策定した「総合戦略」(H27~H31)で、今後5年間で社会減を400人改善(△1300人→△900人)することを目標として掲げました。定住財団のミッションは、この社会動態の改善に向けてその役割を果たすことにほかなりません。
 定住対策は、個人の考え方や生活に直接コミットします。懇切丁寧なアプローチと相手の心象に訴える力が何より必要です。アフターフォローも大事です。慣れない土地に定着するプロセスには大なり小なり不安や悩みが付きものです。そうした状況にあるUIターン者に親身になってサポートする体制が欠かせません。こうした一連の取組みを、島根県は、県、財団、市町村が一体となって、地道に、かつ、きめ細やかに行ってきました。
 豊かな自然や歴史文化、伝統芸能などといった地域資源が魅力であることはもちろんですが、決め手となったのは「人」だということをUIターン者の方々は口々に語られます。島根県はそこの部分でどうやら強みを持っているようです。「オールしまね」での実行体制、全市町村にわたる定住支援員の配置、長年の取組みから得たノウハウの蓄積などが、それを支えています。


 最近のUIターンの状況

 こうした取組みの成果は、いろいろな形で現れています。一例をあげますと、国の認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが毎年発表している「移住希望地ランキング」で、島根県は、昨年、東京圏に近い長野、山梨に次いで堂々3位に入りました。その際の経済誌の記事では、『毎年1位、2位を競う長野と山梨、4位に浮上した静岡は中高年に人気。注目すべきは圏外から14年に8位、15年に3位に入った島根。前述の3県とは対照的に、圧倒的に若者の移住希望が多く、20代、30代で50%以上を占める。よそ者が定住するには現地の受け入れ体制が大切だ。島根県はその体制が最も進んでいて、また県民が移住者と付き合うことに慣れているのだという。』と解説されています。
 実際、島根県へのUIターン者数の増加は、データ的にも現れています。平成26年度までは、UIターン者を「行政の移住支援を受けて転入し、定住する意思のある者」とし、同年度は過去最高の873人でしたが、より実態を反映させるため、平成27年度からは、「県外から転入し、県内に5年以上居住する意思のある者」として集計することとしました。その結果、平成27年度のUIターン者は一気に4252人という数に上りました。年代別では20代が1130人と最も多く、次いで30代が936人と、ふるさと回帰支援センターの移住希望者の動向を裏付けるものです。今年も増加基調は続いており、上半期の比較では、約7%のアップとなっています。


 仕掛けとしての「UIターンフェア」

 定住財団は様々なUIターン促進事業を行っていますが、ここのところ各事業で好調さが浮き彫りになっています。長年担当する職員も「今のUIターンの動きには勢いがある」と言います。
 定住財団の行うUIターン促進の仕掛けであり、UIターンの動向を読み取る試金石とも言える事業に「しまねUIターンフェア」があります。平成22年から毎年、東京、大阪、広島の3会場で実施しており、今年で7年目を迎えます。県内19市町村をはじめ関係支援機関、UIターンの先輩などの多様なブースを設けて、島根がちょっと気になる方から具体的な相談をしたい方まで、きめ細かく対応しています。
 来場者は年々増えており、昨年は過去最高の1280人(3会場合計)を記録しました。この勢いは今年も続き、10月の大阪フェアでは昨年を130人も上回る517人の来場がありました。11月の東京フェアでは、東京国際フォーラムを会場に初めて県内企業ブース(21社、うち松江・安来エリア9社)も設けます。昨年(647人)以上の来場者が期待されます。(註:11/23開催の東京フェアの来場者は、昨年を220人上回る867人という大幅増となり、3会場合計では1598人と過去最高を更新した。)


 UIターン者と県内企業を結ぶ「無料職業紹介事業」

 平成18年から取り組んでいる「無料職業紹介事業」の実績も上がっています。無料職業紹介事業は、定住財団が仲介役となってUIターン希望者と県内企業をマッチングする事業です。UIターン希望者に企業情報をはじめとした定住情報をタイムリーに提供するとともに、きめ細かな就業相談や就職あっせん、求人企業等を知るための企業体験などを行っています。
 昨年は、過去最高の255人のUIターン者(Uターン:約6割、Iターン:約4割)を県内企業への就職につなげることができました。増加の背景には、より良い環境にある島根の地で自己実現を図ろうとする人が増えていること、売り手市場の鮮明化により県内企業の新卒採用環境が極めて厳しく、中途採用という形で良質な人材を外に求める企業が増えていることが窺えます。
 県内外の大学等への進学者や県外企業に就職した者に、県内企業への就職を促すには、まず企業の経営理念や特色、魅力をよく知ってもらうことが大切です。定住財団では、無料職業紹介や新卒就職支援の機能向上のため、UIターン希望者向け「UIターン総合サイト・くらしまねっと」と就活生向け「しまね就活情報サイト・ジョブカフェしまね」を一体的に運営しています。UIターン者等の採用を考えておられる企業の皆様には、ぜひこのサイトを活用して、企業情報・求人情報・企業からのお知らせをリアルタイムで発信してほしいです。素晴らしい人材にめぐりあうチャンスがきっとそこにあります。


 UIターン者の生業(なりわい)を支援する「産業体験事業」

 さらにもう一つ、UIターン促進の中核事業を紹介します。定住財団が平成8年から取り組んでいる「UIターンしまね産業体験事業」で、UIターン対策の元祖とも言える事業です。UIターン希望者の中には、農業、林業、漁業の一次産業や伝統工芸などの分野で、受入れ先(法人、個人)で一定期間の体験(スキルの体得)をしたうえで生業としたいと考えている方も多いです。この事業は、こうした方に対して滞在に要する経費の一部(体験者:月額12万円、受入れ先:月額3万円)を助成し、円滑な就業への応援を行うものです。
 昨年までの20年間で1580人が体験を終了し、そのうち約5割が県内に定着しています。地方回帰の流れの中で、この事業においても島根の地を選んでくださる方が増えています。昨年は過去10年間で最高の83人の認定を行いました。今年はそれをさらに上回るペースとなっています。


 終わりに

 このように、今、島根にはUIターン者の回帰が大きくなりつつあります。しかし、これが一過性のものであっては何にもなりません。流れがいい方向に向かっている今こそ、手綱を引き締め、地に足をつけて流れを確かなものにする必要があります。
 UIターンの推進で島根の地で新たな人生を歩み始めた人たちが羽ばたく、それにより、人が人を呼ぶ好循環、地域のニュースが地域を元気にする好循環が県内各地で生まれることを望んでいます。定住財団は、その一助となるべく、今後とも、存在意義をしっかり果たしてまいります。


   公益財団法人松江法人会 会報「かけはし」(平成29年1月発行)寄稿文

トップへ戻る