でんどう

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平成27年度の財団運営を振り返って

 平成27年度のふるさと島根定住財団の事業執行については、「平成28年度 ふるさと島根定住財団運営方針」において、総括及び特徴的な事業の成果について述べられており、重複する点もありますが、昨年7月に副理事長に就任し財団の運営に携わってきた立場から、自分なりに振り返りをしておきたいと思います。

 平成27年度は、我が国の急速な超高齢・人口減少社会について警鐘を鳴らした「増田レポート」に端を発し、国を挙げて「地方創生」政策が強力に推進されたことにより、全国の自治体が一斉に定住促進に取り組む状況となりました。努力義務とは言え、島根県・県内全19市町村をはじめ全国のほぼすべての自治体が「人口ビジョン」及び「総合戦略」の策定に追われた一年間でした。一方で、若い世代を中心として、地方でのゆったりした暮らし、人と人との絆、農業・農村への志向など、地方への風が吹き始めていることを実感する一年でもありました。

 この風を、追い風として更なる成果につなげるか、それとも自治体間競争の激化という逆風と受け止め守勢にまわるかは、行政の取組み姿勢はもとより、「人」と「人」が結ばれる場所である地域、住民の主体的な意識と行動に負うところが大きいと思っています。

 人口と言えば、平成27年は5年に一度の国勢調査の年に当たりました。速報集計によると、島根県の人口は694,188人で大正9年の第1回国勢調査(島根県:714,712人)以来初めて70万人の大台を割り込みました。前回の国勢調査(H22)と比較し、△23,209人、△3.2%と、依然として人口の減少に歯止めがかからない状況です。ただ、増減率の順位は下から数えて11番目(前回:7番目)となりました。定住財団の設立後間もない平成7年の国勢調査では、島根県は全国一の減少率でした。そこから20年を経て、我が県以上に人口減少の度合いが増している県が増えつつあるようです。 人口減少の要因のうち「自然減」については、超長期を経ないと脱却は困難ですが、「社会減」からは早急に脱け出さなくてはなりません。併せて、出生率を高め人口の減少を緩やかにしていく必要があります。そのためには、子育て環境を整え若い世代の女性・夫婦を中心としたUIターンを一層推進するとともに、高校生・大学生の進学・就職時点の人口の流出入をプラスに持っていく必要があります。まさに財団のミッションの真価が問われるところです。

 このことに関連して、平成27年度は、定住の入り口とも言える新卒者の就職戦線においても大きな動きがありました。大学教育の空洞化を防ぐという観点から、経団連主導の下、2016(平成28)年春の大学卒業予定者の就職活動日程について、広報活動(企業説明)開始時期は3年生時の12月から3月へ、採用選考(面接)開始時期は4年生時の4月から8月へと、それぞれ4か月後方にずらすことになったのです(正式内定時期は従来通り10月以降)。この結果、景気回復による「売り手市場」の情勢とも相まって、いわゆる「オワハラ」(就活終われハラスメント)が社会問題化するなど、就職活動期間の短縮という思惑とは裏腹に、就活生・企業とも内定・就職を確定するまで手探りの混乱した状況が続きました。

 こうした状況の中で、財団の職員は、「現場主義」と「前傾姿勢」という社訓の下、ジョブカフェ事業やUIターン推進、無料職業紹介、地域づくり活動支援、NPO支援などの業務全般にわたり、県内外において新しい企画や斬新な催しなどを積極的に展開し、財団の存在意義を十分に発揮してくれました。その成果は、各分野の統計データに如実に現れています。これらの支援事業やイベントは、テレビや新聞、情報誌などのマスコミにもその都度取り上げられ、財団のPRと職員のモチベーションの向上につながりました。

 以下、財団の主要三本柱の事業に沿って平成27年度の執行状況を振り返ってみます。

 まず、ジョブカフェ事業関係ですが、島根県内の企業と県内外の現役学生との橋渡しの基盤となる「しまね学生登録」の登録学生数は、平成28年2月末現在で7389人に達し、前年度から既に約2000人増えている状況にあります。これは、教育現場の積極的な取組みによるところが大きい(総合戦略では、県内高校の進学予定者のうち学生登録者の割合を5年後に100%とするという評価指標が設定されました。)と思いますが、県内企業に関心を持つ学生が増えつつある実態も示していると受け止めています。この傾向は県内企業でのインターンシップの申込学生数・マッチング件数にも現れており、平成27年度はそれぞれ400人・件を超えました。ここ2~3年100人・件のペースで増えてきています。財団が今年度から始めた参加学生の宿泊費の半額助成の利用者も多く、こうした支援措置が学生の背中を押している面もあると考えています。

 次に、UIターン推進関係ですが、全国の自治体が東京を中心に様々な移住・定住関係のフェアに参加若しくは開催するなど、全国的な人材獲得競争の様相が強まっています。そうした中で、島根県・財団が東京、大阪、広島で独自に開催したUIターンフェアの来場者数は、三会場の合計で過去最高の1280人に上りました。19市町村すべてが参加して、「しごと、くらし、すまい」をパッケージにした、わがまちの「おすすめ定住プラン」を示して相談に応じるほか、UIターンの先輩(「定住サポーター」)から直接話が聞ける場を設けるなど、工夫を凝らした企画や関係者の親身な対応が来場者に好印象を与えているようです。

 先月には、NPO法人ふるさと回帰支援センターが毎年公表している「移住希望地ランキング2015」で、「田舎」を標ぼうする島根県が東京に新幹線等で近接する長野県、山梨県に次いで堂々3位(2014:8位)に入るという嬉しいニュースもありました。

 UIターン求職者と県内企業をつなぐ無料職業紹介事業においても実績が上がっています。県内企業への就職決定者は、昨年8月、事業を開始した平成18年からの累計で1000人の大台を突破しました。平成28年2月末現在、就職決定者数の累計は1162人となり、また、求職登録者数は1818人、企業からの求人数は2001人というかつてない盛況(有効求人倍率1.10倍)となっています。今年度の就職決定者数は、総合戦略の初年度(2月末現在)にしてすでに5年後の目標(210人)を上回る235人に達しています。UIターン求職者のふるさと回帰志向と県内企業の人材確保ニーズがマッチング件数の飛躍的増加につながっているものと思われます。

 このことに関連し、学生やUIターン求職者と県内企業とを結ぶ情報伝達ツールの充実強化に触れておきます。財団では、これまでUIターン希望者に向けては移住・定住ポータルサイト「くらしまねっと」を、県内外の学生に向けては仕事マッチングポータルサイト「しまね就活情報サイトjobcafeしまね」を、それぞれ別個に管理・運用してきました。このたび、これら二つのサイトの効率性、利便性をより高めるため、両システムの求人情報にハローワークの求人情報も加え、トータル約5000件に上る県内最大級の求人件数を掲載した「新・求人情報サイト」に大幅リニューアルしました。リニューアル後のシステムは、専用画面で県内企業と求職者が直接やりとりできるようになるなど、大手民間の就職ポータルサイトにも引けをとらないオンラインによるマッチング機能を新たに具備しており、これが大きなウリです。地方への定住・移住の流れが勢いを増す中、これにより県内企業との仕事マッチングが一層円滑に進むことを期待しています。

 三点目は、地域づくり活動支援関係です。まず、看板事業である「地域づくり応援助成金」ですが、平成27年度は公益重視型11件、経済振興型2件の計13件の事業を採択しました。これらの中には、まちづくり協議会、訪問看護事業を行うNPO法人、障害者就労支援事業所の三者が協働して地域課題の解決を目指す「みとや世代間交流施設「ほほえみ」運営事業」や、商店街全体を「人生ゲーム」のすごろくに見立てて商店街の活性化を図る「出雲まちあそび人生ゲーム事業」など、その活動が新聞等で大きく取り上げられた事業もありました。こうしたマスメディアによる報道は、事業者にとっては励みになりますし、地域の人たちにとっても自信や誇りにつながり、取組みへの理解や協力が得られやすくなるものと考えています。

 平成の市町村大合併から10年が経過し、合併による特別な財政措置も縮小していく中で、各市町村とも地域の隅々にまで目を配ることが中々できにくくなっているように思います。そうしたときに、この助成金が対象とする、特に「公益重視型」の事業については、住民主体で地域の課題を解決していこうという意欲的な取組みであり、行政サービスの補完的、代行的役割を果たす意味合いも持ち合わせています。市町村においてもこうした意義を十分認識され応援していただければと思います。

 次に、農山漁村の生活体験や民家等での宿泊を通じて地域の魅力を発見し活性化を図る「しまね田舎ツーリズム」ですが、今年度は昨年度の「10周年記念キャンペーン」に引き続き、10月、11月の2か月間、県内各地で田舎暮らしを体験する「しまね田舎ツーリズムキャンペーン2015」を実施しました。自然体験、くらし体験、伝統文化体験及び食体験の4ジャンル、131プログラムに、県内外から昨年の実績を上回る2000人を超える参加がありました。広島県を中心に県外からの参加が増加したことも嬉しい成果でした。“田舎のよろこびをおすそわけ”するこの事業の心が県外の人たちにも伝わりつつある証しであると思います。

 そして、この関係でもまた、先月、嬉しいニュースが飛び込んできました。都市と農山漁村の交流や往来の取組みを対象に農林水産省などが行う「第13回オーライ・ニッポン大賞」のグランプリ(内閣総理大臣賞)に、半世紀もの長きにわたって音楽を核とした地域づくりを進めてこられた浜田市金城町の「サウンドファイブ夢の音会」が選ばれたのです。中国地方では初の快挙です。しまねの草の根の取組みが全国に向けて大輪の花を咲かせたと言えるでしょう。

 このほか、「農業・農村はかっこいい!」和歌募集や島根の子どもたちの隠岐体験学習事業など平成27年度に財団が新規に取り組んだ事業は、いずれも若手職員のパワーと創意工夫に溢れる企画で参加者をはじめ関係者に大きな感動を呼び起こすことができました。

 以上のように、平成27年度の財団運営は、平成28年度の「運営方針」で総括されているように、「おおむね満足のいく結果であった」と思います。

 いずれにしても、島根県の定住対策の強みは、県が市町村の現場に足を運び地域の実状をよく理解し市町村と一緒になって地域振興を進めていくという長い年月をかけて醸成してきた行政文化に、フットワーク、ネットワーク、チームワークを旨とする財団が触媒として加わり、方向感を共有した強固なトライアングル体制を形成していることです。

 このスクラムをもって、地方に向け吹いてくる風をうまくキャッチし、現場感覚から外れた奇をてらうようなことはせず、今までどおり地道な取組みを粘り強く、それでいてしなやかに続けていけば、島根の存在感、訴求力はますます高まっていくものと確信しています。新年度も職員が一丸となって、明るく楽しく元気よく、財団ミッションの実現に取り組んでまいります。

                            副理事長  原  仁 史

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