でんどう

地域振興に関わる様々な方の意見、主張を掲載していきます。

地域振興のキーワード「前傾姿勢」と「現場主義」

 今回も「地域振興のキーワード」を取り上げたい。地域信仰教の門徒の心構えの第1に、「前傾姿勢」がある。走る場合の前傾姿勢と同じく、1歩前に足が踏み出せる姿勢だ。常に前向きな心構えを持ち、困難事例にあっても、いつもベストを尽くす。能力を超えたことが要求されるわけではない。しかし、あきらめや手抜きは禁物だ。また、前傾はふんぞり返る姿勢と対局にある。上から目線の戒めでもある。それは「現場主義」とも相応する。
「現場主義」は机上論による権威主義を最も嫌悪する。決して現場の目線を忘れることなく、現場に足を運び課題解決型で考える姿勢だ。観念論になってはいけないし、過度に数値主義に陥るのも間違いだ。
 「前傾姿勢」と「現場主義」は島根県の行政文化として県、市町村や関係団体の門徒の間で20数年来培われてきた。今、全国で取り組まれている地方創生にあって、島根県の“老舗”としての強みはここにある。

 移住者から「別にどこでもよかったけれど島根は受け入れ態勢が親切で応対がよかった」とよく聞く。それは前傾姿勢と現場主義がなせることで、一朝一夕には他県が真似できないものだと考えている。
 受け入れる地域は、状況は厳しいが、明るく生き生きと、地域の生活を楽しむところであってほしい。例えば、四季の恵みを上手にいただく暮らしだ。食卓に彩りとして花や葉っぱを飾る、手間が少しかかるが昔からの伝統料理を皆で楽しむことなどだ。それは「自然との共生」につながる。
 古人(いにしえびと)は、木々の紅葉に季節や時の移ろいを感じ、五七五や五七五七七の歌にしたが、歌で「草もみじ」という語を知った。冬の厳しさは時として耐え難いが、春の訪れがかえって際立つ。
 こうした風情が日本の情緒の深層となり、地方には残っている。

 一回しかない人生をどこでどう過ごすか。「心の豊かさ」を求める時代だといわれて久しいが、意味が変わってきた。かつては「物の豊かさはもう満腹したから、足りないものは心の豊かさ」だったが、いまは、都市にはものの豊かさがあふれているものの、所得格差が広がり誰もがそれを享受できるわけではない。むしろ、「所得は低くても心の豊かさや安らぎが享受できる地方にこそ充実した生活がある」との思考だ。
 これに気づき“農業・農村はかっこいい!”と考える若者が出現している。各種のアンケート調査にも、ふるさと島根定住財団で支援する「しまね暮らし支援」や「産業体験」、国の制度の「地域おこし協力隊」にもはっきりと傾向が出てきた。そうした若者が県内各地に住み、新しい考えや思いで活発に活動している。

 例えば若者の間では、二地域居住やマルチワーカー(さまざまな仕事や活動の複業、兼業)も広がりをもってきた。こうした若者が失望し、やがては都市に“Uターン”しないよう地域で支援していくことが必要だ。“よそ者”として特別扱いすることではない。
 世話のしすぎは、うっとおしいと言われることが多々ある。「いつまでもIターン者として扱わないでほしい」との声も聴く。地域の息子・娘として、叱ったり励ましたり一緒に悩んだり笑ったりすることだ。
 島根田舎ツーリズムの理念は「田舎のよさの“おすそわけ”」だが、この場合は、おすそわけではなく、「地域を担い承継する人材として認知し、地域を共有すること」だ。敬愛するТさんの「地域は血統を継ぐ者だけの占有物ではない」との見識は、人材受け入れによって地域の展望を開くための理念だと思う。

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