でんどう

地域振興に関わる様々な方の意見、主張を掲載していきます。

平成27年度 ふるさと島根定住財団運営方針(理事長所信)

 平成27年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申しあげます。
 まず、平成26年度の業務執行及び主要事業についてでありますが、昨年度に引き続きおおむね満足のいく結果であったと、胸を張って総括出来ると考えています。
 これは業務全般に亘って、職員が、「県のおかれている情況は厳しく、閉塞感があるが、積極果敢に前傾姿勢で取り組んでいこう」との自覚と気概を持つとともに、新しい企画や斬新な催しなどを展開してくれた賜物だと考えます。
 例えば、職業紹介については、より推進を図るため体制を整備しましたが、期待通り、前年を65件上回る194件(うち石見事務所17件)の成果をあげることができました。

 また、県事業として10年目となるしまね田舎ツーリズムについては、10月~11月を強化期間として184本のプログラムを用意するなど、県内各地で様々な活動が展開されました。その広報活動や取り組み全般が評価され、島根広告賞の最高位である「大賞」を受賞しました。まさに、行政と財団と地域が一体となって取り組むしまね田舎ツーリズムの「島根方式」が評価されたことになります。
 また、ジョブカフェ事業課が学生向けに作成したパンフレットも広告賞パンフレット部門の銅賞を得ました。
 いつも言っていますが、こうした「業務の積極的な取り組み~マスコミ報道~財団・財団事業の知名度アップ~事業への参加者の増加~事業成果、財団使命達成度向上」の好循環(スパイラル)が叶いつつあります。
 この財団としてのパワーを27年度にも失速することなく遺憾なく発揮して参りたい。そのためには、職員が活動しやすい条件整備にも努めて参ります。


 さて、昨年発表された人口問題についての衝撃的な増田レポートが契機となった国の地方創生事業については、地方に対する地方創生交付金などが措置されました。県予算も財団から提案した事業など、その財源を使った様々な新規事業が創設され、財団予算についても、こうした県の新規事業を受託することとしました。
 この国の地方創生は地方に関心を向け、地方の活力を増進させる意味では歓迎すべき動きではありますが、それは裏を返せば、人口定住についての全国競争が激化することを意味しています。
 従来は、人口問題が深刻な島根県、鳥取県、北海道や、近年力を入れ始めた高知県など限られた道県以外は、県レベルでの「定住対策」の取り組みは弱く、それらの県は市町村が個別に取り組む傾向にありました。
 今回、地方創生交付金などが県へも財源措置されたため、幸か不幸か否応なしにそれらの県でも取り組みが強化されます。
 この全国競争に勝ち抜いて、島根県が選ばれなければなりません。そのためには、新規事業をはじめ、従来から実施してきた産業体験事業やお試し住宅、県外での就職フェア、UIターンフェア、県外アドバイザーなどによる情報発信と相談業務、移住者への親身になってのお世話など、いわば「老舗の看板事業」を有機的総合的に展開し、使命を果たして参りたいと考えます。
 島根県、そしてふるさと島根定住財団の強みは、県が市町村の現場をよく理解し、現場主義で市町村と連携して地域振興、定住対策を進めて来た「行政文化(県庁文化)」であります。
 この老舗の哲学は、人口規模の小さい県という“利点”を活かし、「県と市町村は地域振興のパートナー」だとして培ったものであり、易々とは他県に真似ができない“決め技”でありますので、この強みを活かした取り組みに活路を求めて行きます。
 また、この行政文化はいわば絶妙な味を醸し出す糠床であり、これを維持保全する“糠味噌を混ぜる作業”、すなわち関係者に対してこの文化の歴史や意義を伝える語り部をつとめていきます。

 ところで、幸いなことに、出雲大社大遷宮などによる島根ブームや、「農業・農村はかっこいい」という価値観を持つ若者が出て来たことなど、島根に向かって新しい風が吹き始めました。しかし、いまだ微風です。この風を絶やさず、さらに興し、強めなければなりません。財団も(私も)、その風を興す風神の役割を果たしていきたい、その決意で業務に当たっていきます。
 さて、毎年、進学で約3,000人が、就職で約300人が県外に転出しております。そのうちのいかに多くを県内回帰させるかがUIターン施策であります。
 大学等在籍中からの働きかけとして学生登録制度などを実施していますが、“大学等への進学前”から卒業後の進路として県内就職を意識させることが必要です。また、それを選択しなかった場合にも、いずれは県内に帰って来たいとの意識を醸成すること、そういう意識を持つ若者をできるだけ多く育てることが必要です。
 県では平成17年度から全小中学校で「ふるさと教育」を実施してきましたが、「ふるさと概念」としては「校区や学校所在市町村」だけに留まらず、「島根県がふるさとだ」という意識を持たせる取り組みが必要だと考えます。
 財団としても、小・中・高校や家庭、地域での「島根に愛着と誇りを持つ教育」、「島根に定住したいと思う教育」に関わっていきます。
 具体的には、従来から実施している派遣教員の活動や、ジョブカフェ事業での学校への出前講座(26年度は前年を大幅増の92件)に加えて、県が新たに雇用する定住・教育アドバイザーを財団としても活用し(形態は個人委託)、県から新規に受託する「隠岐体験学習事業」などと噛み合わせながら県、県教育委員会と協働してまいります。


 今年10月1日は5年ごとの国勢調査が実施されます。人口は地域の経済・文化、交通利便など地域活力に大きく影響します。また、国勢調査は地方財源として重要な地方交付税の配分を決定する数値として大きな意味を持っており、それが5年間使用されますので適切な対応が必要です。
 精神論になりますが、島根県が情況の変化に気づかず何の行動も起こさず死を迎える「ゆでカエル」にはならないため、人口定住対策の意味を倦まず弛まず説明してまいります。
 こうした思いで平成27年度の財団運営に当たりたいと思いますが、具体的事項について、いくつかの主要な点を申しあげます。


 まず、①は職員の配置などについてです。
後ほど申しあげる新規事業などで必要な職員については、人件費の予算措置を得ていますので、所要の人員を配置します。
 また、狭隘な松江事務所については、今回の増員でいよいよ対応が待ったなしとなったため、所要の予算も得ましたのでスペースを拡張します。


②はUIターン人材の受け入れを進める職業紹介業務についてであります。
 26年度は職業紹介業務をより有機的・機動的な業務体制とし、職員が精力的に取り組んだ結果、194件の紹介件数となりました。これは週平均では約4件となる件数であります。また、そのうち石見事務所独自の業務での17件は、パソコンシステムの改善により石見事務所でもデータが利用できるようにしたことと、職員の積極的な取り組みが相俟っての成果です。
 新年度には、このパソコンシステム「くらしまねっと」や「しまね就活情報サイト」の大幅な改修を行ない、より機動的で効率的な業務の遂行に役立ててまいります。
 次に、県新規事業の受託についてです。
 新しく、高校生、大学生のインターンシップについて、石見部や県外の学生に経費の一部を支援する事業を開始します。
 また、確保が急務なIТや建設・土木、介護分野での社会人のUIターンを促すため、就業体験(インターンシップ)期間中の体験経費を支援する制度を創設しました。こうした取り組みにより、関係機関が強力にタッグを組んで必要な人材確保に当たります。


③はUIターンについての、県外での情報発信や相談業務についてです。
 昨年から国の地域活性化センター(JOIN)に派遣した職員は、県が配置する東京での移住アドバイザー2人などとも密接な連携をとりながら目を見張る働きをしています。
 また、若手職員が中心となって、若者の発想での多様な“しまねでつながる交流会”を東京では開催していますが、出席者の反応に手応えを感じていますし、そうした“生簀”の場に参加した者の中からのUIターンの具体的な事例が出ています。
 また、産業体験などでの移住希望者の最近の傾向として、有機農業に関心を持つ者が増えています。「里山資本主義」の共感も広がっています。
 実際に移住し、「“生命・生産・生活の3つの生”の良好な関係」を自ら体験している方を「定住サポーター」に委嘱し、直接会場で語ってもらう企画は相談会場どこでも大人気です。
 こうしたことを踏まえ、新しい試みとして、農業・農村は “かっこいい”と自らのライフスタイルを語る若者から和歌を募集し、「和歌発祥の地」といわれる須我神社がある雲南地方=中山間地域研究センターで優秀作品の発表会を開催します。
 このことを含め、定住・交流情報の全国誌や今回大規模改修を実施するインターネットのホームページなども総合的に駆使し、他県に負けないよう積極果敢にアピールし、定住や交流促進(田舎ツーリズム)につなげていきます。


④は地域づくり支援についてです。
 25年度から、「参加することで地域を支援しよう」のスローガンを提唱していますが、残念ながら広がりに欠けています。また、新規の地域活動や団体の立ち上がりを支援する「地域づくり応援助成金」については、応募がやや低迷しています。県予算ではこの種の予算が縮小された中にあって、この助成制度は地域活動支援の数少ない制度であります。
 雲南市波多コミュニティセンターに開設したマーケットにこの事業で支援した例に見られる如く、この助成によって地域、行政、財団が協働して地域課題に取り組むことが可能です。そうした取り組みを促す意味でも、地域活力を醸成するヒントや契機とする意味でも、地域活動への「参加」を呼びかける講演会や、県内外の実施例やそのリーダー達の熱意・気概を聴く地域づくりセミナーなどを引き続き実施します。
 取り組み開始から10年経った田舎ツーリズムについては、「3つの生」などの理念や、行政、財団、実践者が連携する島根方式が、全国的にも優れ光っていると自負していますが、利用者増を図ることも必要であり、アイデアを出しながら引き続き取り組みます。
 また、田舎ツーリズムの自然や歴史・文化を活かす活動は、地域を再認識し、地域に磨きをかけることに繋がり、ひいては島根の全国評価を高めることにも繋がります。
 そして、田舎ツーリズムを体験する子ども達にとっては、体験によって「島根をふるさとと思う心」を育てる「ふるさと学習」の機会や、家族の絆を強める機会でもあります。田舎ツーリズムは地域の経済活動の側面だけではなく、むしろこうした意義が大きいことも引き続き周知してまいります。
 NPO法人については、認証数が約270法人と増加した一方、解散や休眠が出てくるようになりました。財務や人材面での要因が考えられます。
 地域にあって、NPО活動は「就業」、「参加」、「地域支援」などの活動形態として有用であります。引き続き、事務処理や情報発信の仕方、先発優良事例の紹介などの研修会や、実践者をアドバイザーとして派遣することなどでNPО法人の体力アップを図ります。


⑤は市町村、関係団体などとの密接な関係の構築です。
 定住財団の事業は、いずれも市町村や各地域、企業との密接な提携(連携)があってこそ、事業の円滑な実施が図れるものであります。 顧みれば、島根県の人口定住対策はスタートを過疎対策におき、中山間地域などの定住条件不利地域を重点としてきました。今後ともこうした施策を進める一方、数字的に実を上げるためには市部での定住が欠かせません。
 地方都市は“利便性”と“自然が身近にある”という双方の利点があることをアピールして、若者からシルバー世代までの定住施策を進めてまいります。
 そのためにも、市部にも多く見られる空家や空公共施設を社会資源として利活用し、定住や起業などが進められるよう、関係機関などに謀ってまいります。
 連携して業務を進めるには、地域や企業、市町村との人のネットワークが不可欠であります。クールで機械的な事務処理だけに留まることなく、心のかよう緊密な関係の維持・構築・促進を心がけ、職員一人ひとりが人脈を培うことはもとより、組織としてそれを共有する取り組みも進めます。
 例えば、各研修会の後の交流会や、UIターンした方との意見交換会の実施、各地域でのイベントや祭事に積極的に参加することなどです。それが「参加することでの地域支援」の実践だと考えます。
 人口問題も経済も、特に深刻な石見部については、前述したとおり、石見事務所が職業紹介や地域づくり応援助成金などに精力的に取り組み、成果に結び付けています。
 財団管理職や私としても、持論である「県都との物理的な距離や時間的な距離はなかなか縮められないが、心理的な距離は縮められる」を常に念頭におき、“いわみぷらっと”として実施する「6時からセミナー」や諸会議などで出来るだけ地域や事務所に足を運び、現場の課題を探ったり、ヒントを得たり、激励したりしてまいります。


⑥は地域活力増進のための試行などについてです。
 繰り返しになりますが、県勢の閉塞感を払拭するためには、既成概念に捉われないアイデアや、地域情報をリンクさせた新しい着想などによる果敢なチャレンジが求められます。
 26年度に計上した「定住促進調整費(理事長調整費)」が火種となり、「ルネッサンス青年団事業」や「農業・農村はかっこいい和歌募集」、「30歳の成人式支援」に県予算の計上ができました。これらの事業を成果が出るよう進めるとともに、この調整費では、地域資源を活用する事業などについての芽が出るよう腐心してまいります。


 以上、平成27年度の重点事項について申しあげました。
もとより、定住財団は、この他にも、幅広く多くの事業を実施しています。
学生の就職活動の開始期が変更された中での就職フェアや学生登録、ジョブカフェ窓口でのアドバイス、広報誌、雑誌、新聞による広報などの様々な活動を着実に行っていくことが基本であります。
 職員誰もが、「財団の与えられた使命は人口定住の促進である」ことを肝に銘じて、日々の業務はそれを進めるためのパーツの一つひとつであり、各事業は自己完結的なものではなく、相互に関連性を持たせて実行することでより成果があがることを意識し、不断の活動を行なってまいります。
 最後になりますが、財団の事業はその大半が県民の皆様から負託を受けた県の予算で執行しております。公益法人としての自覚と使命を常に持ち、県民の負託に応えてまいりたいと考えております。
各位にあっては、引き続き、ふるさと島根定住財団に格別のご支援とご協力をいただきますようお願いいたします。

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