「直視すべき現実−転出超過の加速化」 H18.11.25

                 平成18年11月25日
                 (財)ふるさと島根定住財団
この一週間ずっと気が滅入っている。島根県が発表したばかりの「将来人口推計」が頭から離れないのだ。
2006年10月現在 73.6万人の本県人口が、2010年に 71.8万人、2015年には 68.8万人に減少するという。9年間で約5万人、年平均5,000人を上回るペースで人口が減り続けていく。
邑智町と大和村が合併してできた美郷町の人口が5,000人強である。中山間地域を代表するような基礎自治体が、毎年一つずつ消滅してしまうのに匹敵するほどの減少スピードである。
この推計では、「コーホート法」という手法が用いられている。これは現在の年齢別・男女別の人口分布に基づき、今後の出生・死亡・転入・転出という四つの動きを、緻密かつ丹念に積み上げ計算していくものだ。
四つの動きを決める前提条件をどう仮定するかがポイントで、その仮定値によって推計に幅がでてくる。
気が滅入っているのは、資料で仮定値を見る限り、今回の「将来人口推計」は決して過激なものではなく、むしろこの推計値でも楽観的と思われるからだ。
まず、出生・死亡の動き、すなわち自然動態について言えば、本県は、全国に先駆けて1993年から「自然減社会」(出生<死亡)に突入した。以後、年齢構成が上昇するにつれて減少幅も徐々に拡大しており、2005年の自然減は年間 −2,633人に至っている。
今回の推計では、1975年まで30年間さかのぼって基礎データを把握しており、自然動態の面では推計誤差を「期待」できないと言ってよいだろう。今後、よほどドラスティックに年齢構成が変化しない限り、自然減が拡大していくトレンドを押しとどめることはできない。
一方、転入・転出の動き、すなわち社会動態については、今回の推計では、2000年から2005年にかけての5年間の平均的な動きが今後もそのまま継続される、という仮定を置いている。
しかし実際には、本県の社会動態は、2000年 +162人、2001年 −763人、2002年 −1,651人、2003年 −1,625人、2004年 −1,934人、2005年 −2,144人と、この5年間で転出超過が急速に拡大している。
2006年は10月までに −2,899人の転出超過となっており、バブル景気のさなか「東京一極集中」の歪みが顕在化した1990年頃の状態(転出超過 −3,000人台)が再来したかのようである。
われわれは日々の業務の中で、この「転出超過の加速化」を実感している。高校卒業の就職希望者に対し、県内求人を何倍も上回る県外求人が殺到している。大学・短大等の卒業予定者が、大都市圏の企業から早々と「内定」をもらってしまうので、卒業1年前の4月(就職協定の本来の姿である)に県内企業の合同面接会を開催しても、学生が集まってくれない。
島根の高校を卒業した生徒が、県外就職せざるを得ない内外求人格差。県外に進学した学生が、ふるさとの企業を選択肢として考える前に早々とゴールを迎える就職戦線。
この異常な現象は、団塊世代の大量退職を補おうとする一過性の「2007年問題」に過ぎないのか。それとも、実感の伴わない景気回復の裏で潜行する「国土の二極化」が、これから長期にわたって津波のように押し寄せてくる前触れなのか。
一過性の現象ならば、2015年の本県人口は68.8万人に踏み留まることができるかもしれない。しかしそれが津波ならば…。
一旦県外で就職した人たちにUターン・Iターンしてもらうためには、ご本人にどれだけ大きな決断とエネルギーが必要か。それをサポートする我々にとってもどれだけ難易度の高い仕事であるか。財団設立から15年間、そのことを思い知らされてきた。
だからこそ「転出超過の加速化」という恐ろしい現実が島根の将来に及ぼす影響の深刻さを、直視しなければならないと思う。
文末に添付した資料(PDFファイル)を、できればご覧いただきたい。島根県内を七つの圏域に分けて将来人口推計を行ったデータが載っている。
注目していただきたいのは、各圏域の年齢別人口分布のグラフである。2005年と2015年の年齢分布を対比して見られるようになっている。
グラフにすると、その深刻さが一目瞭然である。
松江圏、出雲圏でも、2015年の年齢分布は下へ行くほど細くなる「逆ピラミッド」状態であり、一見して安定感を欠いている。まして、それ以外の5圏域の2015年のグラフは、59歳以下があまりにやせ細ってしまい、これで地域社会としての機能が成り立つのか不安を覚えるほどだ。
どの圏域にも共通した特徴として、20〜24歳の年齢層が極端にくびれてしまい、反対に65〜69歳の層が突出して多くなっている。前者は、若年層の流出を示しており、後者は、「団塊の世代」が10年後その年齢層に達することを意味している。
このグラフを見せつけられると、「もはや手遅れだ」という悪魔の囁きが聞こえてきそうだが、座視することは許されない。今できることに全力を傾注するしかないと思う。
若年層の著しい流出は、地域の活力を奪うだけでなく、結婚・出産の減少を通じてその次の世代を激減させるという悪循環を生む。まず、この「負の再生産」を止めなければいけない。県も市町村も、我々のような関係機関も、今一度、この原点に向けて政策目標を統一する必要があるのではないか。
そして、もう一つ。10年後に65〜69歳に達する「団塊の世代」の方々には、引き続き、地域社会を牽引する「主役」として頑張り続けていただかなければならない。そうしなければ、地域社会が維持できなくなる。このことを、2015年の年齢分布グラフは冷徹に訴えているのだと思う。
恐ろしい現実を直視できるか。手遅れにならないうちに悪循環を断ち切れるか。島根に住むわれわれに残された時間は、もう多くはない。
【参照】 島根県の圏域別将来人口推計(PDF)

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