「商業教育60年誌」巻頭言

 このたび、島根県高等学校商業教育研究会60周年を記念して、記念誌を発行されることは、研究活動について過去をふまえるとともに現状を理解し、未来を展望する意味において、まことに意義深いことであり、会員のご努力に対し深い敬意を表するものであります。

 私も次のとおり、拙文を寄稿させていただきます。

 商業の「商」は、中国の古代国家「商」に由来すると言う。商の末裔が交易を生業としたことに発し、そうした物の交易を行う者を商人、商業と称したというのである。

 なるほど子どもの時「商」という国名は、舜・堯といった帝王の名や夏・周の王朝名とともに記憶にあり、当時商業の商の字だなと漠然と思ったことを覚えているが、近年になって”やっぱり”と、その関連性についての答を得ることになった。

 さて、いささか場違いながら「島根田舎ツーリズム」について紹介する。商業とまんざら無関係でもあるまい。

 グリーンツーリズムやどぶろく特区などの取り組みが、全国で自然発生的に広がりつつある。その推進を島根県では「島根田舎ツーリズム」と称し、具体的には「ふるさと島根定住財団」を推進役として進めている。

 その理念は次のようなものである。

 「農山漁村は、自然の『生命』、それを育み加工する『生産』、自然の生命の恵みをいただきそれらを享受する『生活』この3つの『生』が混然と一体的に融合した大変意義深いところである。そこは都市が見失った日本の伝統文化の源泉であり、豊かな自然や歴史、あるいは風土や人情が今なお残る我が国にとって貴重な地域である。

 経済性・効率性を追い求める現在の風潮の中で、都市と農山漁村はそれぞれに課題を抱えている。都市住民が交流や定住で農山漁村に身を置き、こうした3つの『生』について体験する時間を持つことは、様々な社会病理を解決していくための糸口になると期待される。

 そのためには、『島根田舎ツーリズム』の大いなる可能性を発展させ、短期滞在型から長期滞在型へ、さらに二地域居住、そして定住へとつなげていく必要がある。」

 こうした考え方や取り組みは、本県の産業としての経済効果はそう多くは期待できないが、理念・哲学、大袈裟にいえば文化活動の理論的論拠としての意義が大であると思う。

 改めて、皆さんにもそうした視点で県内の自然、歴史、文化、伝統、年中行事そして、生活文化や食資源、言語、気質等を貴重な資源として再評価して欲しいと思うものである。

 新たな社会を創造するためには、このようなことに思いをはせ、柔軟な発想で地域資源を用いることで、地域発展に寄与する人材を育成することが重要である。

 貴研究会員の高い見識と優れた洞察力、そして指導力により、魅力ある人材づくりの歩みを確かなものにしていただけるものと期待するとともに、貴研究会の今後一層の発展を祈念して祝辞とします。


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