ふるさと島根定住財団運営方針

ふるさと島根定住財団運営方針

令和2年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申し述べます。

令和2年度 ふるさと島根定住財団運営方針

文字通り和らぎと華やぎの中穏やかにスタートした「令和」も2年目を迎えました。
30年続いた「平成」は、グローバル化やインターネットの普及を背景に社会が大きく変化し、社会事象に対する世代間の意識の違いなど価値観の多様化が進んだ時代でした。その「平成」からバトンを受け継いだ「令和」の時代の主役は、平成期に多感な幼少期や青年期を過ごした若者です。これからの行政施策を講じるうえで特に意識すべきことは、これら新しい価値観を持つ若者の行動ベクトルに焦点をあて、彼らのニーズをいかに汲み取り、彼らが活躍できる場をいかに創っていくかということだと思います。

また、日本では「平成」から「令和」への移行で時代の転換が感じ取られたわけですが、日本に限らず世界全体に共通する潮流として「仕事の変化」、「働き方の変化」を背景とする時代の大きな変わり目が来ていることも認識する必要があります。今や、ITやAIの進化で機械ができる仕事の範囲がものすごいスピードで拡張し、これまで人間が行ってきた様々な事務処理をコンピュータが代替し得るようになってきました。これはとりもなおさず、指示されたことを正確かつ素早くやることが評価された時代から、何をすべきか、何をやれば価値があるのかを自分で考えて行動しなければならない時代へと移り変わっていくことを意味します。

平成の初頭に誕生し、社会の趨勢に呼応しながら人口定住の促進を図ってきたふるさと島根定住財団ですが、令和に入り、こうした時代の移り変わりを敏感に察知し、新たな地平を切り開いていく気概を持つ必要性を痛感するところです。

そうした思いを抱きながら、令和2年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申し述べます。

令和2年度は、島根県が目指すべき将来の姿を明らかにし、今後の施策運営の総合的・基本的な指針となる「島根創生計画」がスタートする年となります。
その中の「人口減少に打ち勝つための総合戦略」(計画第一編)には、「新しい人の流れづくり」として、若者の県内就職の促進やUターン・Iターンの促進をはじめ新たな切り口となる関係人口の拡大など、ふるさと島根定住財団が担うべき多くの取組が盛り込まれています。改めて、当財団に寄せられる期待の大きさとその重責に身の引き締まる思いがいたします。

令和2年度の財団運営に当たっては、島根が目指す将来像として計画に示された「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」の実現に寄与すべく、既存事業を戦略的な視点で見直すとともに新たな事業にも積極果敢に取り組んでまいります。

以下、財団に課せられた揺るぎない目的である「若者の県内就職の促進」、「UIターンの促進」、「活力と魅力ある地域づくりの促進」の三本柱に沿って、今年度を振り返りつつ新年度事業の概要を申し述べます。

ポイント1

若者の県内就職の促進

島根県の社会減の最大の要因は、高校から大学等への進学時、大学等から社会に出る就職時を中心とする若者の大量流出にあります。固い岩盤からなるこの二つの山の切り崩しは容易ではなく、まさに難攻不落の様相を呈しています。

手掛かりはあります。一つめの山関連として、県内の大学への入学時の県出身者割合が低いと卒業時の県内就職率も低くなる傾向がみられること(県立大学2019卒の例)、二つ目の山関連として、後述の「COC+事業」の取組等に伴い県内の大学の県外出身学生の県内就職者数が年々増えていること(2016卒:200名→2019卒:235名)、また、県出身者が最も多い中国地域の大学の新卒者の動向がIターン就職を含め県内就職全体に大きく影響すること、が挙げられます。

新年度においては、島根大学が中心となって5年間にわたり進めてきた「COC+事業」(地域協働型の教育プログラムやしまね大交流会などを実施)の成果を踏まえ、これを継承・発展させる形で産学官からなるコンソーシアムが設立されます。当財団は、このコンソーシアムに、島根県とともに参加します。コンソーシアムでは、参加団体の連携・協働により、県内学生の県内就職に向けて、学生が地元企業を知る機会の提供から就職までを切れ目なく対応していくことになります。

また、今年度からUターン志望学生にとって大きな負担となるインターンシップや就職活動時の交通費等を半額助成する事業を開始していますが、下限額が片道1万円であるため、肝心の中国地方の学生が利用できない状況が生じていました。そこで、この3月(2021卒の就活開始)から片道3千円に引き下げ、中国地区や近畿地区の大学に在学する学生を県内就職に誘導しやすい仕組みに改めました。見直し後の制度が、県外事務所に配置された学生就職アドバイザー(R1.12 広島、大阪に設置)の周知活動等により、中国地区等に在住する学生にプラスの動きをもたらすことを期待しています。

このほか、県外大学在学生のUターン就職に向けては、より早い段階から県内企業を知る機会があることが重要であり、県と財団が分担・連携して学生と県内企業等が交流する取組を活発化させてまいります。

ポイント2

UIターンの促進

UI昨年秋、島根県が公表した2019年の人口移動調査によると、社会動態は▲896人の大幅な社会減となりました。同時期のUIターン者数も4000人を割り込み3763人と前年対比300人強の減少となりました。残念な結果ではありますが、そのうちIターン者の減少が約85%を占め、さらにその約8割を国外からの移住者が占めている状況に鑑みれば、このことをもって定住施策の実効性を悲観すべきものではないと受け止めています。無料職業紹介事業による就職決定者数や産業体験事業の新規認定者数も前年度並みの高い水準で推移しています。

ただ、近年首都圏からのUターン者が減り続けていることには留意すべきです。東京一極集中の是正が進まないことと軌を一にするものですが、東京でのUターンIターンフェアにおける島根県出身者の割合が過去に比べ低下していることとも関連するかもしれません。フェアについては、東京、大阪、広島の三会場とも来場者が減少傾向にある中で「具体的に相談したい事柄があった」とする本気度の高い者の割合が増えてきていることや出身地や年代などに地域特性が見られることなどを踏まえ、これまでどおり三会場一律の大掛かりなやり方でいいのか、再検討する必要性を感じています。

いずれにしても、今後は、これまでUIターンとして一括りにしたやり方一辺倒ではなく、Uターン・Iターン別、地域別や年代別、性別、さらには島根への関心度合いなどに応じてターゲットを明確にしたきめ細かい対応も行っていく必要があります。

特に人口が多く多様性に富む首都圏は強い誘引力を有していることから、昨年9月に設置した当財団の東京拠点「しまね移住支援サテライト東京」(R2.2 帝国ホテルタワー10Fに事務所移転、R2.4「日比谷しまね館」に移住相談コーナー設置予定)を前線基地として、財団本部との連携のもと他地域での取組のモデルとなるような企画を適宜実施していきたいと考えています。

新年度はさらに、地方への移住希望はあるが移住先が決まっていない人の取り込みをねらって、首都圏の移住希望者が多く立ち寄る「ふるさと回帰支援センター」(東京・有楽町「交通会館」内)に、財団として島根県ブースを設置します。センターでの相談対応は、移住支援コーディネーター1名を新たに採用(職員4名→5名体制)し、コーディネーター3名でセンターと東京サテライトをローテーションすることとしています。大海に網を仕掛けて生け簀につなぐイメージです。結果が求められます。

ポイント3

活力と魅力ある地域づくりの促進

「地域づくりは人づくり」と言われて久しくなります。地域に熱意を持って地域課題の解決や地域活性化に取り組む人たちの存在があってこそ持続性のある地域社会が形成され、新たな担い手を生み出す土壌も形成されます。財団としても、こうした人材が県内各地で活躍することがUターンやIターンの促進にもつながり人口定住に寄与するとの信念のもと、「地域づくり応援助成事業」をはじめとした種々の支援事業に取り組んでまいりました。

しかしながら、地域や集落を支える担い手のリタイヤや後継者不足により住民のみでは集落の活力を維持することがだんだんと難しくなってきている状況も生じています。今のうちに手を打たなければという危機感や焦燥感を持っている地域・集落も少なくないだろうと思います。

一方で、都市部では、「定住人口」でも「交流人口」でもなく、地域や地域の人々と多様な関わりを持つ「関係人口」という形で地域に入る人たちが現れており、地域づくりの担い手不足という課題に直面する地域では、地域に変化をもたらす新たな担い手として「関係人口」に注目するところが増えてきています。今年度、財団が助成した事業の中にも、住民の大半が高齢者でUIターン者の流入も限定的ではあるけれども、UIターン者や関係人口の活動により活力を増幅させている中山間地域の事例がみられます。

こうした状況を背景に、新年度は、地域づくり活動支援の一環として、これまで県が担ってきた関係人口にかかる業務(島根とつながる人材を発掘・育成する「しまコトアカデミー」の運営、ソーシャル人材育成に向けた首都圏の大学等との連携等)を財団が受け持つことになりました。この業務の先兵となる首都圏での関係人口の掘り起こし(セミナー開催、コミュニティの育成等)は、東京サテライトが担い、都市側(首都圏)の「関係案内所」機能を高めてまいります。

将来的には、財団が、市町村や地域支援団体との連携により地方側(県内)の「関係案内所」機能も合わせ持ち、都市側のニーズ(UIターン希望者、関係人口、社会貢献や地域貢献活動に積極的な企業等)と地方側のニーズ(地域課題の解決や地域活性化に向けた活動への参画)をマッチングできるような力をつけていくことを目指します。県内の都市と農山村の関係においても同様です。

そうした考えで、核となる「地域づくり応援助成事業」については、民間団体が地域資源を活用して行う「スモールビジネス」を県が支援する事業が新設されることや、財団が県内側の関係案内所機能を持つための手掛かりとなるような事業(例えば関係人口等の参加が見込まれる事業)を戦略的に見出していく見地から、助成規模と対象事業の見直しを行うこととしています。

以上、長々と申し述べましたが、財団が、これらの事業を円滑かつ効果的に実施するためには、定型的な事務は可能な限りコンピュータで対応できるようシステムを見直し、財団でなくてもできる事務は積極的に外部委託する一方で、量より質を重視する観点から、失敗を恐れずワクワク感を持ちながらトライする企画を大事にするなど、職員一人一人が肉体的、精神的に過重な負担とならないよう配意することが極めて重要です。時代の変わり目にあって、「組織は人なり」という言葉を改めて胸に刻んで取り組んでまいります。

引き続き、ご理解とご支援、ご協力をお願い申し上げます。

令和2年4月1日

公益財団法人
ふるさと島根定住財団理事長
原 仁史

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