ふるさと島根定住財団運営方針

ふるさと島根定住財団運営方針

平成31年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申し述べます。

平成31年度 ふるさと島根定住財団運営方針

いよいよ新しい時代の幕開けとなる改元の年を迎えました。タイミング的にも人口減少を所与のものとして捉え、様々な分野でこれまでとは別の価値観、違う考え方に基づく仕組みに変えていかなければならない時代のスタートとなります。平成4年に誕生し、平成の時代とともに成長の過程を歩んできたふるさと島根定住財団も、設立25周年の節目を経て、時代の変化に的確に対応した新生組織のあり方を模索すべき段階に入ったと感じています。
そうした思いを持ちながら、平成31年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申し述べます。

平成31年度は、島根県政においても、トップの交代をはじめ、次期「島根県総合戦略」の策定などこれからの島根に関わる大きな事案が待ち受けています。
平成31年度の財団運営に当たっては、こうした動きに絶えずアンテナを張りながら、行政と民間と人をつなぐ架け橋としての役割を果たすべく、イノベーションを取り入れた、新時代にマッチした事業を展開してまいります。

総務省が年初に公表した2018年の人口移動報告によると、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は転入者が転出者を約14万人上回る「転入超過」となり、東京一極集中は是正どころか拡大している状況にあります。そのうち約12万7千人は進学や就職の時期に当たる15~29歳が占めており、地方からの若者流出が一層顕著になっていることが窺えます。

そうした中にあって、島根県においては、総合戦略の数値目標を上回る社会動態の改善がみられます。しかしながら、これは、近年のブラジル、ベトナムなどの外国人労働者の増加に負うところが大であり、そこに直接タッチしていない立場としては手放しで喜ぶというわけにもいかないところです。「県外からの転入者で転入市町村に5年以上住む予定のある者」と定義しているUIターン者の動向をみても、国外を中心にIターン者が増えている一方で、20~30代を中心とするUターン者の減少が大きく、これまで維持してきた年間4000人を超える人数の確保も危うい状況となっています。今後も、若い世代を中心に据えた人口減少対策が県政の大きな政策課題となることは言を俟たないでしょう。

それとともに、外国人の定住対策の重要性も確実に増していくものと思います。そこに財団が関わる余地があるのか、あるとすればどのような関わり方が考えられるのか、についてもしっかりと検討していく必要があります。

以下、財団が、総合戦略の人口定住施策を最前線で担う団体として、全職員一丸となって取り組んでいる「若者の県内就職の促進」、「UIターンの促進」、「活力と魅力ある地域づくりの促進」の三本柱について、今年度事業の実績並びに新年度事業の概要を申し述べます。

ポイント1

若者の県内就職の促進

島根県の社会減の最大の要因は、総務省報告にもあるように、高校から大学等への進学時、大学等から社会に出る就職時を中心とする若者の大量流出にあります。特に島根県は、大学が国公立の2校(全国最低)しかなく、県内高校生に対する収容力が極めて限定的であるため、県外の大学に進学する者の割合は8割を大きく超える状況にあります。

加えて、少子化により島根県出身の大学等の新卒者自体が5年前に比べ300人以上減っている(学校基本調査における大学等への進学者数から推計)中での構造的とも言える「売り手市場」(ただし、業種別、従業員規模別の有効求人倍率の差異に留意)です。財団が実施する企業ガイダンス(合同説明会)や就職フェア(面接会)の参加学生もひと頃に比べかなり減っています。

こうした状況は当分続くと見込まれ、県外に進学した人材を就職時点で島根県に引き戻すことが、産業面でも定住面でもますます大きな課題となっています。島根の若者に、義務教育段階からのふるさと教育やキャリア教育、さらには県内の地域や企業での体験などを通して、郷土への愛着や関心、そしてUターン就職に向けた意識をいかに醸成するかがその鍵を握っています。

現状は、県外の大学に進学した県出身者の県内就職率(Uターン割合)は3割に満たず(2018卒:29.5%)、県内の大学に進学した県出身者の県内就職率も約6割(2018卒:61.7%)にとどまるという厳しい状況(財団調べ)です。社会動態の安定的な改善のためには、この新卒時点の学生の目線をいかに県内に向けさせるかが最大の課題です。

財団が、その一環として取り組んでいる県外の低学年次の学生と県内企業が交流する「しまね企業交流セミナー」には、今年度も延べ250人を超える学生の参加がありました。企業の熱意と学生の満足度の高い有意義な取組みとなっています。ただ、同じく低学年次の学生を対象としたインターンシップについては、夏期は昨年並みの人数の参加があったものの、春期は、就活の実質的な早期化を反映してか、参加申込が大きく減りました。県内企業の受入れ希望が高まっているだけにもどかしい思いです。

そこで、新年度においては、UIターン志望学生にとって大きな負担となっているインターンシップや就職活動時の交通費・宿泊費を助成する事業を開始します。この事業が、新卒学生の県内就職率のアップに寄与することを大いに期待しています。

また、首都圏を含め20校となった就職支援協定締結大学との連携を強化しながら、県外学生と県内企業をつなぐ「しまね企業交流セミナー」や県内企業の情報発信力や採用力を強化するためのセミナー等も積極的に実施してまいります。

ポイント2

UIターンの促進

UIターンの動向については、冒頭でも触れましたが、県内の中山間地域や離島においては、子育て世代を中心としたIターンが続いており、田園回帰の確かな流れを感じさせます。

財団最大のイベントである「しまねUIターンフェア」は、今年度も3会場(東京、大阪、広島)の合計で過去最高(2,083人)の来場者を得ることができました。初めて2日間の開催となった東京会場は、昨年度を約400人上回る1302人の来場がありました。単独県の開催で、かつ物産販売なしで、これだけの集客ができるのは、市町村をはじめ関係機関・団体の努力はもちろんですが、何かしら惹きつける力を島根県はもっているから、かもしれません。

新年度も、多くの来場者が見込める東京の開催を2日間とする一方、「島根ふるさとフェア」でのPR効果を狙って試行的に1月開催としていた広島については、教育関係の来場者が少なかったこともあり、秋期の開催に戻すこととしました。

無料職業紹介や産業体験も好調に推移しています。平成31年2月末現在の無料職業紹介の就職決定者数(294人)及び産業体験の新規認定者数(75人)は、ともに昨年同期を上回っています。無料職業紹介については、1000人達成まで10年かかった就職決定者数が、わずか3年(H28~H30)で2000人を突破したことが特筆されます。また、産業体験においては、近年、農業や畜産などの分野で外国人の研修者が見られるようになっていることも注目される点です。

新年度は、UIターン希望者と県内企業とのマッチングサイトである「くらしまねっと」における生活関連情報の充実、産業体験の受入先情報の質的強化、求人企業の掲載情報の充実等を図るほか、新規に移住希望者が県内での利便性をより享受できるような応援カードをつくることとしています。これらの取組みにより、無料職業紹介事業や産業体験事業の水準を維持していきたいと考えています。

さらに、新年度からは、成果が出ていない東京一極集中の是正を最大の目的とした国の新たな移住支援事業が全国一斉にスタートすることになりました。これは、東京圏から地方に移住して就業又は起業する者に対して移住支援金を支給し経済的な負担を軽減する事業です。財団では、この事業の実施に必要な「くらしまねっと」の改修を行い、東京圏からのUIターンを促進することとしています。

ポイント3

活力と魅力ある地域づくりの促進

地域づくりの推進は、その性格上、他の二つの柱と異なり、成果を数値で示すことが難しく、厳しい評価に晒されやすいという弱みを抱えています。その上、県からの補助金という限られた財源により事業を行っている以上、真に地域課題や社会課題の解決につながる支援かどうかを今まで以上に精査することが求められています。そうしたことから、今年度は「地域づくり応援助成事業」について、ハード主体の事業は助成対象から外し、ソフト主体の事業に絞る取扱い(コト重視)としました。申請の出足は思わしくなかったものの、最終的には、厳選された事業を昨年並みに確保することができました。

「地域づくり情熱人支援事業」については、3年目の今年度が新規採択の最終年度でありました。地域づくりに取り組む団体が地域活動のキーマンとなる人材(情熱人)を確保し、新たな活動の創出や活動の更なる波及効果を目指すこの事業は、ニーズも高かっただけに廃止は残念ですが、予算の制約上やむを得ません。

このように、地域の活性化や地域の課題解決に資する活動を行う団体等にとって、常に頭を悩ます問題は、人とお金です。このため、新年度からは、地域を盛り上げる人材の育成の観点から、「県内版しまコトアカデミー」(地域活動に関心のある若者等が活動への関わり方を学ぶ連続講座)を財団が担当して開講することになりました。また、団体等の資金調達力を強化する観点からは、多様な資金調達手法を学ぶセミナーやクラウドファンディングの伴走支援など、財団スタッフのスキルアップも含めた新たな支援事業を開始することとしています。

地域づくりが定量的な評価になじみにくいことは確かですが、地域に暮らす人たちが楽しくいきいきと活動していることは、幸福度の観点からも評価すべきことと思います。そうした地域は、移住・定住だけでなく関係人口や交流人口にもよい流れを生み出すことでしょう。地域づくりへの支援が三本柱の真ん中にあって、UIターンや若者の県内就職の促進にも寄与するものと考える所以です。

県の主宰する「小さな拠点づくり」との共催により実施した「地域づくりオールスター祭」には、地域づくり団体、NPO法人、UIターン者、地域おこし協力隊員など、県内各地の様々な分野からこれまでを大きく上回る約340名の参加があり、このことをあらためて強く実感する機会となりました。

新年度は、県が首都圏等で行う関係人口づくりの取組みにも関わっていくほか、地域おこし協力隊の募集や交流・研修に係る事務についても財団が引き受け、定着率のアップにつなげることとしています。

以上、長々と申し述べましたが、財団が、これらの事業を円滑かつ効果的に実施するためには、組織体制が柔軟かつ強固であることが何より重要です。4月からは、労働者の多様な働き方を支援する働き方改革関連法も始動します。

新年度は、仕事と子育ての両立や職場における女性の活躍を推進するための「一般事業主行動計画」(策定済み)や、すべての職員が互いに尊重し合える安全で快適な職場環境づくりのための「職場のハラスメント防止方針」(策定予定)などを含めた総合的な「働き方改革」を一層推進し、「3つのWill」(①風通しのよい意思疎通、②自由闊達な意見交換、③迅速な意思決定)が息づいた、爽やかな組織風土づくりを目指してまいります。

引き続き、ご理解とご支援、ご協力をお願い申し上げます。

 

(追記)

これから超長期にわたって続く人口減少社会にあっては、地域に密着し多様で小回りの利く中小企業の活躍の場が大きく広がっていくものと思われます。人口減少社会だからこそ中小企業の可能性は一層高まると言っても過言ではないと思います。
中小企業の意義については、「中小企業憲章」(H22.6 閣議決定)において、次のように高らかに謳われています(抜粋)。中小企業に勇気と元気と誇りと自信を与えてくれる力強いメッセージです。今、この時代だからこそ噛みしめたいものです。

『中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。常に時代の先駆けとして積極果敢に挑戦を続け、多くの難局に遭っても、これを乗り越えてきた。』
『中小企業は、経済やくらしを支え、牽引する。創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える。意思決定の素早さや行動力、個性豊かな得意分野や多種多様な可能性を持つ。経営者は、企業家精神に溢れ、自らの才覚で事業を営みながら、家族のみならず従業員を守る責任を果たす。中小企業は、経営者と従業員が一体感を発揮し、一人ひとりの努力が目に見える形で成果に結びつき易い場である。』
『このように中小企業は、国家の財産ともいうべき存在である。一方で、中小企業の多くは、資金や人材などに制約があるため、外からの変化に弱く、不公平な取引を強いられるなど数多くの困難に晒されてきた。この中で、大企業に重きを置く風潮や価値観が形成されてきた。』
『難局の克服への展開が求められるこのような時代にこそ、これまで以上に意欲を持って努力と創意工夫を重ねることに高い価値を置かなければならない。中小企業は、その大いなる担い手である。』
『中小企業の要諦は人材にある。働く人々が積極的に自己研鑽に取り組めるよう能力開発の機会を確保する。魅力ある中小企業への就業や起業を促し、人材が大企業信仰にとらわれないよう、各学校段階を通じて健全な勤労観や職業観を形成する教育を充実する。』

全企業の99.9%が中小企業である島根県こそ、中小企業の重要性と可能性をしっかりと認識し、これを次代を担う若者をはじめすべての県民に的確に発信していくことが大変重要であるとつくづく思います。

公益財団法人
ふるさと島根定住財団理事長
原 仁史

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