ふるさと島根定住財団運営方針

ふるさと島根定住財団運営方針

平成30年度の財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申し述べます。

平成29年度事業の総括

はじめに、平成29年度の業務執行及び主だった事業について総括します。
平成29年度も、これまで同様、「前傾姿勢、現場主義」を旗印に、ミッションである「人材の地元定着と県外からの流入による人口の社会増スパイラルの実現」を目指して、「若者の県内就職の促進、UIターンの促進、活力と魅力ある地域づくりの促進」の三つの柱に、職員一丸となって取り組みました。その結果、後ほど述べますように、それぞれの分野において「おおむね評価に値する結果」を残すことができたのではないかと考えています。

我が国が先進諸国に先駆けて本格的な人口減少社会に突入し、とりわけ生産年齢人口が縮小する中にあって、若い世代を中心とする東京一極集中は、是正どころか加速化の一途を辿り、地方における人材確保はますます困難な状況となっています。

一方、島根県の調査によると、平成28年度の島根県へのUIターン者数は、4376人で前年度を124人上回る実績を示しましたが、平成29年度上半期は、一転して前年同期に比べて149人減の2007人にとどまるなど、年間4000人を超えるUIターン者の継続確保が予断を許さない状況となっています。全体の約6割を占めるUターン者が減ったこと(△165人)が大きな要因であり、景気回復により採用が活発化する都会地の企業に新卒者が奪われていることも影響しているものと考えられます。

今後、少子化により18歳人口の大幅な減少が見込まれることと照らし合わせて考えると、県外の大学等に進学した若者をいかにして島根に帰すかについて、今まで以上に官民が結束して知恵を絞り、実効性のある取組みを打ち出していくことがますます重要となっています。

以下、平成29年度の具体的な事業成果を申し上げます。

ポイント1

若者の県内就職促進

まず、「若者の県内就職の促進」の関係では、冒頭で述べましたように、景気回復で企業の採用意欲が高まる一方、若い世代の人口減少を受けて求職者が減っているため、労働需給がひっ迫し、有効求人倍率は全国的にバブル期並みの高水準になっています。「売り手市場」が続く中で、新卒者の多くは都会地の企業を志向し、県内企業は業種を問わず人手不足が極めて深刻な課題となっています。

こうした状況は全国的な傾向であり、その流れには抗し難いものがありますが、それだからこそ、島根出身の学生には就職活動に入る前の低学年次に、できるだけ県内企業を知ってもらう機会を提供し、就職先の選択肢に入れてもらうことが必要です。
こうした考えで取り組んでいる県外の低学年次の学生と県内企業が交流する「しまね企業交流セミナー」(東京、大阪、山陽で各5回開催)には、延べ215人の学生が参加し、企業の熱意と学生の満足度の高い有意義な取組みとなりました。

低学年次の学生を対象とした県内企業での「しまね学生インターンシップ」(3~5日の就業体験)については、夏期(7~9月)は昨年並みの参加人数を確保できましたが、春期(1~3月)は学生の申込が思わしくなく、残念ながら年間目標の450人に達しない見込みです。大学関係者によれば、島根出身の学生が減ってきていることに加え、特に春期は多くの企業が導入しだした1dayインターンシップに学生が流れている可能性があるようです。

在学中の学生を対象とした「しまね学生登録」は、高校との連携や大学が主催する保護者説明会でのPR・働きかけ等により、登録者数が1万人を突破しました(H30.2末時点:10,899人)。

ポイント2

UIターンの促進

「UIターンの促進」の関係では、財団最大のイベントである「しまねUIターンフェア」の来場者数が毎年着実に増えてきています。
平成29年度は、東京、大阪、広島の3会場すべてに全市町村が参加したのをはじめ、教育ブースや企業ブースを設けて来場者の相談ニーズに幅広く対応した結果、東京と広島で過去最高の来場があり、3会場の合計も過去最高の1658人を記録しました。
無料職業紹介についても、人材確保を喫緊の課題とする県内企業の熱心な求人等により、好調に推移しています。平成30年2月末現在の就職決定者数は、すでに過去最高を記録した前年度実績(262人)を上回る278人(石見部59人)に達しています。

産業体験については、ここ3年ほど続いていた新規認定者の増加が一服した状況です。平成30年2月末現在の新規認定者数は、昨年同期に比べ3人減の73人(石見部29人)となっています。最近の傾向としては、漁業や農業の分野で受入れ先と雇用契約を結んで研修体験を行う事例が増えていること、出雲部の件数が伸び石見部を上回る状況になってきたことなどが挙げられます。

ポイント3

活力と魅力ある地域づくりの促進

「活力と魅力ある地域づくりの促進」の関係では、従来から行っている「地域づくり応援助成事業」や昨年度から始めた「地域づくり情熱人(じょうねつびと)支援事業」のニーズが旺盛であるとともに、地域づくりに関する相談やアドバイザーの派遣件数も増加傾向にあります。今年度は、地域からも若者からも選ばれる企業が増えることを願って、地域貢献をしたい企業と地域貢献をしている団体がつながるような仕掛けづくりにも取り組みました。
これは、企業の地域貢献による活力と魅力の向上と企業の参画による地域づくりの促進の相乗効果を狙ったチャレンジングな試みです。

また、昨年度から団体客層の誘致に向けたプログラムの造成に取り組んでいる「しまね田舎ツーリズム」については、今年度は、秋から冬にかけて国内外の3大学(武庫川女子大学、琉球大学、デュッセルドルフ大学)の学生を出雲、石見に迎え入れるモニターツアーを実施しました。参加した学生の満足度はそれぞれに高く、田舎ツーリズムの持つインバウンド対策としての可能性も実感されたところです。

平成30年度の業務執行の基本的考え方

次に、平成30年度の業務執行における基本的考え方及び重点的に取り組む事項について申し述べます。
平成30年度は、「平成」という年号を付す最後の年度であり、一つの時代を締め括る記念すべき年度になります。そして、十二支は戌。戌年は、成熟を終え、一つの区切りを迎える年と言われます。まさに、今まで積み上げてきたことを収穫し終え、枯れたものや終わったものをきちんと整理し、新しい始まりに向けて、準備を整える年と言えるでしょう。

節目の年度に当たる平成30年度の財団運営に当たっては、四半世紀に及ぶ財団の歩みを振り返りつつ、行政(県、市町村等)と民間(企業、団体等)と人(若者、UIターン者、地域住民等)とをつなぐ架け橋としての存在意義を一層自覚し、CS(顧客満足度)とES(従業員満足度)がともに高い、時代にマッチした事業を展開してまいります。
そのため、財団としても、長時間労働の是正だけでなく福利厚生の充実などを含めた総合的な「働き方改革」を推進し、(1)風通しのよい意思疎通、(2)自由闊達な意見交換、③迅速な意思決定の「3つのWill」が実践され、職員一人ひとりのモチベーションが高い職場づくりを目指します。

さて、定住対策を進める上で、今、特に注視し、力を入れていかなければならない課題は、社会減の最大要因であり、今後も長期にわたりパイ(人口)自体が減っていく20代前半~30代前半の年齢層のUIターンをいかにして進めていくかということです。特に、県外の大学等に進学した者の新卒時点及び県外企業に就職後3~10年程度経過した時点のUターン(県内就職)が鍵を握っています。

新年度は、この課題を事業部門の3課(ジョブカフェ事業課、UIターン推進課、地域活動支援課)が共有し、所管事業の横展開の可能性を常に模索するなど、言わば「オールTJ」で若者定住の成果を出していきたいと考えています。

平成30年度予算の概要

さて、島根県の平成30年度一般会計当初予算案は、「県版総合戦略」を一層進めるための予算として編成され、スクラップ・アンド・ビルド方式による既存事業の見直しと新規事業の構築が図られた結果、中小企業制度融資関連事業(特別会計に移行)を除く総額で0.2%の増という、3年ぶりの増額予算となりました。
その最大の柱は、「総合戦略」に基づく地方創生・人口減少対策で、その中には、財団が担う若者の就業・定着の促進やUIターンの推進も含まれています。
財団が補助又は委託を受けて実施する定住対策関連の県予算は、関係3部(地域振興部、商工労働部、環境生活部)の合計で5百万円余の増額となりました。中核となる地域振興部関係の予算は21百万円の減額となっていますが、これは社会人向けの就業体験事業(28百万円余)の廃止など事業効果が低い事業の見直しによるものであり、UIターンの推進をはじめとする財団の主要事業の執行に支障を生じることはないと考えています。

平成30年度の財団予算は、これら県からの補助・委託によるもののほか、ほぼ前年度並みの国からの受託費、及び基金財源を充当して行う財団独自事業の縮小、並びに同じく基金財源により賄ってきた総務部門の人件費が県の補助対象となったことによる財源の振替により、当初予算対比2.5%減の総額732百万円となりました。

財団の設立から四半世紀が経過したわけですが、この間、全県レベルで定住対策に取り組む団体として、創意工夫をこらしながら時代を先取りした事業を逐次展開してまいりました。それらの多くは、財団の三つの柱それぞれの基軸となる事業として結実・定着しています。事業規模も、この10年間で約2倍に拡大し、近年は7億円台で安定的に推移している状況にあります。

これからも、社会の変化やニーズに的確に対応すべく、個々の事業のあり方を不断に見直していく必要がありますが、その際には、「不易流行」の視点を大切にしながら、事業の量より質を高める取組み、言い換えればプロ集団としての深掘りの利いた取組みを重視していきたいと思っています。
以下、財団事業の三つの柱に沿って、重点的に取り組む事業の概要を申し述べます。

ポイント1

若者の県内就職促進

まず、「若者の県内就職の促進」の関係ですが、2019年卒の学生を対象とした大手企業の就活スケジュールは、2018年卒と同様、3月説明会開始、6月面接開始(選考解禁)という短期決戦となりました。全国的に人手不足が深刻化する中、大手企業が地方への採用攻勢を強めていることもあって、県内企業にとっては、新卒社員の確保がますます難しくなっている状況にあります。

また、県外の大学に進学した県出身者の県内就職率(Uターン割合)は3割に達せず(2017卒:28.7%)、県内の大学に進学した県出身者の県内就職率さえも6割に達しない(2017卒:58.9%)という厳しい現実(財団調べ)もあります。社会動態を改善するためには、まずこの新卒時点の県外流出を何としても抑えなければなりません。

平成30年度の財団主催の就活生向けイベントについては、より実効を上げるため、就職支援協定締結大学(14校)を中心に、就活解禁前の段階から小規模なイベントにより県内企業への関心を高めておき、3月以降の企業ガイダンス(合同企業説明会)は県内の開催に一本化する予定です。その上で、できるだけ多くの学生の参加が得られるような工夫を講じたいと考えています。
さらに、平成30年度からは、県、財団及び関係機関が分担・連携し、県内大学と県外大学(就職支援協定締結大学、首都圏等の大学)ごとに、それぞれ関係する大学との連携を密にしながら、低学年次からの取組みを強化していくことにしています。

財団としては、県内企業と参加学生の双方にメリットのある「しまね学生インターンシップ」や県外学生と県内企業をつなぐ「しまね企業交流セミナー」を引き続き推進してまいります。あわせて、就職に影響力を持つ保護者、教員に対しても県内企業の情報を提供し、県内就職への関心を高めてまいります。同時に、各企業においても、財団が行うセミナー等を利用し、自社の魅力発信力や採用力を高める取組みを積極的に行ってほしいと思います。

ポイント2

UIターンの促進

次に、「UIターンの促進」の関係では、平成30年度は、来場者が最も多い東京での開催を2日間とし、相談対応を充実・強化します。また、広島での開催は、今年度同様「島根ふるさとフェア」の1週間後とし、初めて企業ブースも設けることとしています。ちょうど就活解禁直前の時期に当たることから、島根からの進学者が多い広島をはじめとした山陽地区の学生の来場にも大いに期待しています。

ところで、昨年、県が行った『UIターン者等への意識調査』では、島根にUターン、Iターンした人のうち、「現在住んでいる地域に暮らし続けたい」と回答したのはいずれも約半数という残念な結果が示されました。県の分析では、「近所付き合いや地域活動をしている人ほど定住意向が高いが、地域との関わり方や人間関係についてはIターン者を中心に不安や不便を感じる人も多い」とされています。そこで、新年度は、UIターン者のフォローアップを強化するため、移住者と地域とをつなげる活動をする団体を支援する事業を新設します。

着実に成果を挙げている産業体験事業や無料職業紹介事業については、UIターンフェア等での情報発信や相談対応の充実、受入れ先の掘り起こし等により、引き続き高水準を維持していきたいと思います。

ポイント3

活力と魅力ある地域づくりの促進

次に、「活力と魅力ある地域づくりの促進」の関係ですが、地域はUIターン人材の活躍の場でもあります。昨年、財団が行った『地域づくり応援助成事業の第三者評価』においても、アンケート調査とヒアリング調査を基に「移住者の誘致・定着に助成先団体の事業が大きく関わっている可能性が示唆されている」とし、助成事業が、地域への経済波及効果だけでなく、社会増加への貢献にも機能していると評価されています。

新年度も、「地域づくり応援助成事業」や「地域づくり情熱人支援事業」などに、今年度とほぼ同規模の予算を確保し、これらの事業を通じて、人材が活躍し地域が元気になる取組みのお手伝いをしてまいります。また、採択された団体の取組みについては、今年度全面的にリニューアルした財団ホームページ上で、団体の活動状況やキーマンの見える化などを進めてまいります。
しまね田舎ツーリズム推進事業」については、引き続き、実践者の掘り起こしに努めるとともに、団体・グループ層の誘致に向けたプログラムの造成、及びこれに基づくモニターツアーの実施等により、欧州などからのインバウンドを含め体験者数の増加を目指します。

2年目を迎える「中山間地域・離島におけるNPO創出伴走支援事業」については、地域住民を取り込んだ持続可能な事業のプランづくり、パイロット事業の助成にまでステップアップする予定です。

以上、長々と申し述べましたが、「ふるさと島根定住財団」は、ミッションを通じて、次代を担う若者が島根に暮らして、地域に魅力を感じ、やりがいや満足感、幸福感を享受できるような社会環境づくりに貢献する財団でありたいと思っています。

新年度は、無期嘱託職員制度の本格実施などに伴い組織の陣容が相当程度変わる見込みです。たとえ陣容がどう変わろうと、職員の一人ひとりが、財団に与えられたミッションをよく理解し、その実現に向けて、社是である「前傾姿勢、現場主義」はもとより、行動指針である「フットワーク、ネットワーク、チームワークを大切にしよう」や「鳥の目、虫の目、魚の目の視点を持とう」などの合言葉を日々の業務の中で常に意識するような組織を作っていきたいと考えています。

引き続き、ご理解とご支援、ご協力をお願い申し上げます。

公益財団法人
ふるさと島根定住財団理事長
原 仁史

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