令和7年度における財団運営の基本的な考え方及び重点的に取り組む事項について申し上げます。
まず、財団を取り巻く状況等について総括的に申し上げます。
(1)国内の人の流れを見ると、東京圏への一極集中が再び拡大し、今後の更なる加速が懸念されます。
コロナ禍で一旦縮小に転じたものの、令和4年以降、再度拡大へと転じ、令和6年の日本人移動者の転入超過は約12万人となりました。
(2)県内の状況を見ると、島根県の人口移動は転出超過が続き、令和6年は前年に比べ減少幅は小さくなりましたが、日本人の社会減は同程度であり、15~29歳の層での転出超過が2千人を上回ったこと
県内高校生の進学先は約8割が県外であり、一方で県内大学への進学者の約7割が県外からであり、県内大学の県内就職率等も伸び悩んでいることなど、依然として厳しい状況にあります。
(3)一方で、財団が行っている無料職業紹介の就職決定者数は令和5年度は過去最高の337人(同行家族等含めると628人)となり、令和6年度もそれを上回る見込みとなっています。
令和7年度は、10月に5年に1度の国勢調査が実施され、また第2期島根創生計画がスタートする年となります。今回の計画の数値目標としては、人口の社会移動を2040年までに均衡させることを長期目標とし、第2期計画期間での目標を令和11年に▲763人とすることとされました。
令和6年の実績が▲1,110人であることを踏まえると、この目標達成は容易なことではありませんが、さらに人口減少が進むと次第に地域から活気が失われ、買い物などの日常生活にも支障が生じ、そうした状況が更なる人口流出につながりかねず、地域によっては既にそうしたことが現実化しつつあります。
このため、私たち定住財団が果たすべき役割は、1人でも多くの方に移住・定住してもらえるよう地道な取組を進めるとともに、時代の変化・トレンドを把握しながら、新たな取組にも積極的にチャレンジしていくことだと考えます。
こうした考えに立って、令和7年度の財団運営を進めてまいりますが、以下、財団の3本柱ごとに重点的に取り組む事項について申し述べます。
若年者の県内就職の促進
まず、若年者の県内就職の促進についてであります。
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県内外に進学した学生をはじめとする若者が、島根で働く魅力や意義について考え、県内企業等への就業意識を高めてもらうため、各種の情報提供や企業ガイダンス等の就職活動イベントの開催、しまね短期仕事体験等の就業体験事業を実施します。
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特に島根大学や島根県立大学との連携を深め、県内大学からの参加者増を図っていきます。
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さらに学生等が県内で就職活動を行う際の宿泊・交通費助成について、対象学年や上限額を拡充します。
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また、新たに保護者が常時情報収集できる専用サイトを開設し、県内企業等の情報を発信します。
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県内外の学生に様々な情報を届けるための基盤である「しまね登録」は、引き続き各高校現場のご理解・ご協力をいただきながら、高校を卒業される方に登録を呼びかけていくとともに、就職活動開始年次の学生を中心としたキャンペーンの実施など、さらなる登録拡大に取り組んでまいります。
県外からのUIターンの促進
次に、県外からのUIターンの促進についてであります。
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東京、大阪での対面イベントは、しまね移住フェアとしまね暮らしマルシェを同日・同会場で開催し、幅広い層を移住相談につなげられるよう取り組むとともに、20~30歳代の県出身学生及び社会人を対象とした合同企業説明会を東京、大阪で開催します。
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新たに、首都圏での移住イベントを企画・実施する移住プランナーを配置します。
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UIターン無料職業紹介事業では、財団の求人サイトに自動マッチング機能を追加し、就職支援の取組を強化するとともに、引き続き移住希望者に寄り添ったきめ細かな相談支援に努めてまいります。
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しまね産業体験事業では、令和5年度、6年度とも新規認定者数が伸び悩んでいますが、体験終了時の定着率は80%超の高い水準を維持しつづけており、新規認定者増に向けた広報・周知活動を強化しながら、体験者へのきめ細かなフォローと関係機関との連携等に引き続き取り組んでまいります。
活力と魅力ある地域づくりの促進
次に、活力と魅力ある地域づくりの促進についてであります。
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関係人口の拡大に向けては、その掘り起こしに引き続き取り組みながら、ポータルサイト「しまっち!」を軸としたマッチング支援を行っていきます。また、地域活動に参加した関係人口を地域の担い手やUIターンにつなげるよう、一定期間現地滞在し地域活動に参加する実証事業を継続して実施するとともに、県内の地域づくり関心層に向けて、地域づくり活動を新たに始めるための実践的な講座を開催します。
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「しまコトアカデミー」は、東京、大阪での開催を継続し、過去の講座修了生のネットワーク化や活動のフォローを行うとともに、首都圏大学への寄付講座開設を継続実施します。
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「しまね田舎ツーリズム」については、移住定住・関係人口へとつなげていくため、主に県外在住者に対する体験機会の提供に注力していきます。また、新たな実践者の開拓と実践者同士のネットワーク化にも力を入れてまいります。
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また、社会貢献活動や地域の課題解決に取り組む団体の活動(NPO活動)の活性化に向け、組織力や資金調達力の強化に資するよう、引き続き研修機会の提供や相談対応に取り組んでまいります。
以上、令和7年度に重点的に取り組む事項について申し上げました。
私たちふるさと島根定住財団は、平成4年の設立から32年が経過しました。また、平成7年にはじめてプロパー職員を採用して以来、徐々に職員を増やしてきたところですが、この4月には新たに2名のプロパー職員を採用し、プロパー職員が20名となります。
人口減少対策には、地道で継続的な取組みが必要であり、過去の経験を活かしつつ新たな試みにも果敢に挑戦していく、そして私たちが置かれている状況を真摯にかつ俯瞰的にとらえながら、自律的に成長し続けるよう取り組んでいける、そんな財団組織を目指すことが不可欠だと考えます。
本年度からは、全職員を対象とする「目標評価制度」を導入し、職員一人ひとりが具体的な目標を持ち、その達成に向け努力し、これを評価する取組を始めますが、その前提として、現場主義と前傾姿勢を重んじ、鳥の目・虫の目・魚の目の視点をもって、フットワーク・ネットワーク・チームワークを最大限活かしながら取り組んでいくという、財団の理念・基本姿勢を貫いてまいります。
財団職員がその力量を最大限発揮し、かつ、相互に支えあい、成長へと導きながら、さらなる高みを目指していくことで、財団の総合力の押し上げにつなげ、島根創生の実現に資するよう、私たちの使命を全うしていきたいと考えております。
各位におかれましては、ふるさと島根定住財団に対し、引き続き格別のご支援、お力添えをいただきますようお願い申し上げます。
令和7年4月1日
公益財団法人ふるさと島根定住財団理事長